一方的な批判・非難ばかりのSNS、いじめについて考える読書ブログ

少しでも心のモヤモヤが晴れて、心が優しく、強く感じられるように。

「弱者の価値転換」 ルサンチマン【道徳は復讐である】

0.はじめに

ルサンチマンとは、哲学上の用語で、

「現実の行為によって、反撃することが不可能なとき、

想像上の復讐によってその埋め合わせをしようとする者が

心に抱き続ける反復感情」と定義されています。

(今回紹介する本から引用)

ドイツ(プロイセン)の19世紀の哲学者・思想家のニーチェが唱えた、

弱者の負の感情です。

 

19世紀に唱えられたものですが、

現代のネットでの負の感情を表すときにも、

当てはまるところが大きく、再び注目されています。

 

今まで紹介してきた、

・「フリーライダーを許さない」

・「他人の得を許さない」

と合わせると、ネットでの誹謗中傷や、一方的な批判を

読み解くことができます。

 

今回紹介するのは、ニーチェルサンチマンに関する、

解説書になります。

非常に参考になる、おすすめの本です。

 

今回の目次です。

 

1.紹介する本

道徳は復讐である - ニーチェルサンチマンの哲学(河出文庫

著者:永井 均さん

永井さんは、哲学者で、多くの著書がありますが、

わかりやすい論調で、専門的になりがちな哲学を解説してくれます。

 

実際にこの本でもウィトゲンシュタインなどの記述も交えながら、

ルサンチマンをわかりやすく説明していますので、

ニーチェだけを純粋に、となると少し違うかもしれません。

 

哲学の導入向けの本も多いですが、

哲学の「意訳」にあたる部分で、賛否がありますので、

ニーチェの理解を深めたい方は、原著も記事最後の

関連記事で紹介させていただいています。

 

2.内容の簡単な要約

ルサンチマンの定義、本質

・現代におけるルサンチマン

ルサンチマンの価値転換

ルサンチマンの克服

他の哲学者の言葉も引用して、

ルサンチマンの解説をしています。

巻末には、小説家の川上未映子さんとの対談も載っていて、

これだけでも読む価値ありの面白い内容です。

 

いつもはあまり引用はしないのですが、

ルサンチマンの思想や価値転換について、

非常にわかりやすく、面白い部分があるので、

引用させていただきます。

 

手が届かなかったブドウを狐が恨んでも、それはまだルサンチマンではない

酸っぱいブドウだったと自分に言い聞かせたとしても、

それはまだルサンチマンとはいえない

しかし、狐がもし、そもそも甘いものは健康に良くないという

「思想」を持ったとすれば、あるいは

甘いものを食べない生き方こそが本当の生き方なのだ、という

「価値」を信じたとすれば、

そのときは彼は紛れもなくルサンチマンにとらわれたのである。

 

3.感想とまとめ

ルサンチマンにとらわれた形で、価値の転換を図って、社会を否定していく構図は、

ネットでの非難、誹謗中傷を読み解く要素になります。

「一般庶民の弱者だから、成功している芸能人やアスリート、

上級国民の政治家には、何を言っても構わない」

「成功している人の矛盾や一流にふさわしくないところを、

一般庶民が指摘、批判するのは当然の権利」

ネットで報じられる側と、コメントする側が完全に別の世界で、

ネットの向こうの幸福と、ネットのこちらの不幸は別に起こっている、

別の世界の話だから、何を言っても構わない、など、

ルサンチマンの価値転換」をフィルターとしてかけてみると読み解ける、

ネットのコメントが多くあると感じます。

 

読み解くことで、ネットの毒を上手く識別して、

情報のジャングルを上手く、できるだけ安全に歩いていきたいです。

 

このブログでは、ルサンチマン

ネットの非難などに関連した感情の一つとして扱っていますが、

20世紀、21世紀において、

格差社会の進む原因の一つと捉えられていたり、

知っておくと、現代社会を読み解く大きな武器となると感じています。

 

ニーチェについて、論じられている哲学論はとても多く、

現代に影響の多い哲学者だと感じます。

著書内でも、哲学者と捉えると、色々賛否が起きるけど、

思想家としては、突出している、

ルサンチマンは、単なる人生論ではなく、実際に起きている事だと

捉えると、その凄さが理解できる、とあります。

 

今回の本は、薄めの文庫なので、

手軽に哲学に触れるいいきっかけになる本だと思います。

 

4.関連記事

ニーチェの訳著になります。

誰かの解釈が混じらないニーチェの原著に触れられます。

今回の本など、何か解説書や導入の本を読むと、より理解が進むと思います。

あと、過去記事も合わせて読んでいただくと、

ネットコメントの読み解きに役立つと思います。

hanasakutarou.hatenablog.com

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