一方的な批判・非難ばかりのSNS、いじめについて考える読書ブログ

少しでも心のモヤモヤが晴れて、心が優しく、強く感じられるように。

差別感情のタブーと矛盾を直視する【差別感情の哲学】

0.はじめに

ネットでの差別感情について触れている記事は

このブログでも多く書いてきています。

差別の加害者感情が起こる仕組みに積極的に触れている著書は、

いじめ同様に少ないのが実情だと考えています。

 

いじめ同様に、差別は「悪いこと」「存在してはいけないこと」

自分は、自分の家族は、自分の属する組織は、

「差別 =(イコール)悪いことはしていない」

として、明らかにならなかったり、

なかったことにされてしまっていることも問題だと思っています。

 

今回紹介する本は、差別をする側の感情や仕組を論じて、

その矛盾やタブーに踏み込んでいる本です。

 

今回の目次です。

 

1.紹介する本

「差別感情の哲学」(講談社学術文庫

著者:中島 義道さん

中島さんは哲学者で、カント哲学を中心にたくさんの著書があります。

哲学者でありながら、「哲学は人を幸福にしない」など、

批判的な視点の著書も多く、面白い著者さんだと思います。

 

2.内容のまとめ

人間が差別感情を持ってしまうことに対して、

差別を良くないことだと定義しながらも、

どうやっても差別感情からは免れることはできない矛盾について

事例を挙げながら考察を重ねます。

社会的な結びつきが強い社会が生む差別、希薄な社会が生む差別、

制度が生んでしまう差別、意識の中の差別、

立場が変わることで、差別意識も変わってしまうこと、

差別に向き合うはずが、逆に差別を起こしてしまう矛盾、

差別を否定する非難が、差別の上になりたつこと、など、

様々な方向から、差別が発生する感情を論じます。

 

過去に持ったであろう差別感情を責め立てたり、

悔い改めることを強いられるわけでもありません。

誰にでも、いかなる状況でも起こってしまう差別感情に

向かい合うことを述べています。

 

3.感想とまとめ

いじめ問題と同様に、いや、いじめ問題以上に、

差別も自らが常に抱えていることを認識させられる本です。

ただ、それを悲観したりすることもなく、

ましてや他人を批判するために使う必要もないと考えます。

 

読む意味があると強く感じる本だという個人的な意見の上ではありますが、

残念ながら、この本は、簡単な解決法は示してくれません。

「頑張って仲良く」みたいな解決法ももちろん示してはいません。

すごく簡単に説明すれば、とにかく知りましょう、

矛盾に向かい合いましょう、という警鐘を鳴らす本です。

 

また、差別被害者に勇気を与えて、

差別するやつは悪いやつですね、という本でもありません。

いじめを受けて、心身ともつらい時に、

あまりいじめ関係の本に無理に向かい合わなくても、

いいと個人的には考えているのですが、

この本も同様に、現在差別されて、苦しい方を

今すぐ楽にしてくれる要素はあまりないと感じます。

ただ、本当に差別をなくすべきだ、と踏ん張れる時には、

向かい合ってもいい本かと思います。

 

この著書だけの話ではありませんが、

差別関係の本は、アマゾンなどの書評は、賛否が割れます。

個人的には、本の内容も、もちろんなくはないと思うのですが、

どんなに科学的であっても、読むときの心情が反映されてしまう難しさが

あるのだと思います。

差別を受けて、苦しい人は、できるだけ解決につながる情報がほしいですし、

差別をしている人の悪いところを挙げてほしいと思うでしょう。

いじめでも、同様だと考えられます。

残念ながら、加害者心理に切り込む本は、

その時に読む本としては、スッキリしない本になると思います。

 

まずは誰にでも差別感情は起こっていることを知って、

向かい合って、その上で、自分が正しいと思い込まずに、

でもあまり自己嫌悪せずに、自分にも他人にも寛容であるように、

ということにつきると思います。

その材料としては、申し分ない本だと思います。

 

関連記事

hanasakutarou.hatenablog.com

hanasakutarou.hatenablog.com

hanasakutarou.hatenablog.com