一方的な批判・非難ばかりのSNS、いじめについて考える読書ブログ

少しでも心のモヤモヤが晴れて、心が優しく、強く感じられるように。

人間の生産性と不寛容【この国の不寛容の果てに】

0.はじめに

相模原事件は、いたましい事件であったと共に、

加害者の発言と、それに対する社会の反応に、

二重のショックがもたらされた事件だと捉えられています。

 

今でも、毎年事件の前後の日には、

事件後の社会と被害者の周辺を検証するテレビ番組が放映され、

社会の関心の高さがあらためてうかがわれます。

 

かけがいのない命がたくさん、一方的な誤った認識で、

失われてしまったことが何に変えても、あってはならないのですが、

同時に、加害者の事件の動機と、それに対するそれなりの数の賛同が、

大きな社会問題となりました。

誰もが持ってしまっていながらも、良くないと思っている

優生思想感に向かい合わされました。

加害者は、裁判が進むほどに当初ほどの一貫性が見られなく

なってしまった感もありますが、

一部の賛同的な意見を出した社会の背景を読み解くことは、

いまだに進んだり、解決されてる訳ではないと思われます。

 

差別問題同様の目を向けたくない現実に対して、

目を向けましょうという内容だけではなく、

その背景にある加害者心理や、賛同者の心理にも

切り込んでいく対話集を今回は紹介いたします。

 

今回の目次です。

 

1.紹介する本

「この国の不寛容の果てに: 相模原事件と私たちの時代」(大月書店)

著者:雨宮 処凛さん

雨宮さんは、ライターの方になりますが、

格差問題や貧困や生きづらさに関する著書があります。

 

2.内容まとめ

著者が、マスコミ関係、医療関係者、障害者ヘルパー、ソーシャルワーカー

の方と、事件について、それぞれの立場での見方を対話で、

聞き出し、まとめた対話集になります。

 

特徴的というか、読むべき点が、

著者が加害者を否定するだけではなく、

著者の心の中にもある、加害者の心情を追いかけて

対話をする人たちともその心情をぶつけ、

加害者を生み出してしまった、社会を読み解こうと試みているところです。

 

著者も対談されている方も、とても真摯に、

丁寧に、言葉を出されているのが印象的です。

その上で、いのちについて、深く考え、その大切さを

それぞれ話しています。

 

対談の概要は、著者のサイト(note)でも公開されています。

読んだ上でも、著書のフルバージョンはより充実していますので、

読めるだけ読んでから著書に向かっても、問題ありません。

 

3.感想とまとめ

正面から向かい合いにくい事件に対して、

対話形式でまとめられているので、

重苦しくなく、読み進めていくことができます。

 

対話をしている人たちが、

加害者の否定だけで、この事件を片づけてしまうことなく、

その主張と、その背景に真摯に向かい合おうとしています。

この事件の難しさは、加害者が被害者を

「無価値」と決めつけて、その主張に同意する声が発生したところです。

これに対して、そんな加害者こそ無価値、おかしいと

決めつけることなく向かい合わないと、

この事件の再発が防げないと考えられていると、

個人的には感じました。

 

社会の不安が加害者を生んでしまい、

大量殺人や無残な事件が起こった時に、

加害者を断じて気分を治めてしまうのではなく、

嫌な気分がしながらも、向かい合い、

背景の理解と、その解決に向かわないと、

いつまでも本質的な解決には近づきません。

 

そういう意味では、モヤモヤが先にたってしまって、

なかなか向かい合いにくい内容に対して、

もっと最前線で向かい合う人たちがいて、

その思いを共有できることが、一番貴重な内容だと思います。

読むことで、解決するわけでも、スッキリする訳ではないですが、

考える続けていく勇気をもらえる本でした。

 

関連記事

hanasakutarou.hatenablog.com