取り上げている書籍まとめ5作 いじめ・差別問題編③
0.はじめに
今までの記事で行っている書籍紹介のうち、
いじめ・差別問題で取り上げている書籍を
5作、まとめさせていただきます。
優しく、読みやすい本から、厳しい現実を突きつけられる書籍まで、
ありますが、いじめ・差別問題の書籍は、
心に一種の負荷をかけるような面もありますので、
とにかくどんどん読みましょう、というよりは、
読むときの心の状態と相談して読まれた方がいいと思います。
いじめ・差別問題の書籍は、
できるだけ他人事にせずに、「自分事」にできるような
書籍が理解を深める上で効果的だと思うので、紹介の際のポイントにしています。
今回の目次です。
- 0.はじめに
- 1.「この国の不寛容の果てに: 相模原事件と私たちの時代」(大月書店)
- 2.「いじめ 心の中がのぞけたら」(朝日学生新聞社)
- 3.「差別はたいてい悪意のない人がする」(大月書店)
- 4.「いじめの直し方」(朝日新聞出版)
- 5.子どもを救ういじめが終わる方程式(学術出版)
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1.「この国の不寛容の果てに: 相模原事件と私たちの時代」(大月書店)
著者:雨宮 処凛さん
相模原で障害者施設の方々が多数殺傷されてしまった、
大変いたましい、いわゆる相模原事件について書かれた書籍です。
加害者の非難、否定で終わることなく、
様々な立場の方と、事件について対話を行い、
加害者の心情と、それを生み出してしまった社会にせまろうとしています。
いたましい事件が繰り返される中で、
社会が加害者を生み、被害者を作り出してしまう、
向かい合うのは困難ながら、事件発生を無くす為には
加害者心理を社会から見つめることが必要、というスタンスが伝わる本です。
2.「いじめ 心の中がのぞけたら」(朝日学生新聞社)
作者:本山 理咲さん
中学生向けの新聞連載マンガの書籍化になります。
中学生の投稿を元にした創作マンガですが、
子どものリアルな心情が描かれています。
15年以上続いている連載になりますが、
初期の連載から、現在の連載まで、あまり変わることの無い、
中学生時代の心情が描かれています。
いじめられる人、いじめている人、周りで見ている人、
周囲の大人への不満、他にも、いじめ返しであったり、
無力感に悩んでいたり、など様々な心の葛藤が描かれています。
優しい画調のマンガ作品で、読みやすいながらも、
いじめを「自分事」にしてくれる作品です。
3.「差別はたいてい悪意のない人がする」(大月書店)
著者:キム・ジヘ さん
韓国の差別問題に対して書かれている本ですが、
一部の制度面以外で、特に心情面などは、日本にそっくりな現状が、
非常に興味深い本です。
自分は差別はしていないし、自分の周りは平等だから関係ない、
という人たちから読んでほしい本だと思います。
差別は、差別をしていない、と思い込んでいる人たちが
主に生み出してしまっている現実を見つめ、
変化の先にある平等に向かうことが述べられています。
差別を生み出す心情の一つとされる、
「相対的剥奪」という実際と自分と、期待している自分との差に対して
不満が生まれる感情、
差別を解消しているように見せかけながら、助長してしまう、
「トークニズム」という組織的な考え方などにふれ、
心理的な問題、制度・組織的な問題の両面からのアプローチが論じられています。
4.「いじめの直し方」(朝日新聞出版)
著者:内藤 朝雄さん、荻上 チキさん
子ども向けに書かれている、いじめの対処法が書かれている本です。
いじめられている子どもに向け、いじめの原因となっている
教育環境の問題、いじめがエスカレートしていく仕組み、
そして、現実的ないじめとの距離の置き方について、書かれています。
大人だと、まず当たり前に取る対策なのに、
「クラスはみんな一緒に仲良く」と縛られた中で、
取ることが除外されていた方法に触れているのは、
今でも珍しいアプローチで、大人にも貴重な本だと思います。
5.子どもを救ういじめが終わる方程式(学術出版)
著者:品田 奈美さん
いじめをなくす為の具体的な方法論が述べられている本ですが、
とても、独特ながら、興味深い内容だと思います。
著者が提唱する、いじめ防止プログラム、
解説、実践講義とその効果が書かれています。
毒になったり、誤った認識を植え付ける内容ではないと思うので、
子どもたちに、学校などで是非一度、試しにでも講義を
受けさせてあげるべきでは、と思う内容です。
大人にも効果的だと思いますが、本当に効果が欲しい人に
届くかがどうかに、いい内容だけに考えてしまいます。
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