一方的な批判・非難ばかりのSNS、いじめについて考える読書ブログ

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ヘイトスピーチの背景を理解するために【ヘイトスピーチと対抗報道】

0.はじめに

ヘイトスピーチは、差別思想に基づいた発言や行動を指す言葉ですが、

日本では、多くは在日コリアンの方、在日中国人の方に

(今回紹介させていただく著書の表現に合わせています)

向けられることが多く、その様子がメディアに上がることがあります。

 

実は、私は京都と東京で、ヘイトスピーチを昔に

遠くで通りがかりですが聞いたことがあります。

まだ、今の様なヘイトスピーチを禁止する法律も、

ヘイトスピーチによる刑事罰も行われていない時だったのですが、

遠くで、注意せずに通過してしまったせいもありますが、

後で、報道を見て文字で見て何を言ってるのかを確認するぐらい、

怒鳴り騒いでいた、というのが第一印象です。

主義主張というよりは、怒声が聞こえていたことを覚えています。

内容の問題よりも、怖いなと雰囲気の印象で考えていました。

 

今回紹介させていただくのは、差別問題と、

ヘイトスピーチの取材を長く行っている方が論じている書籍になります。

 

今回の目次です。

 

1.紹介する本

ヘイトスピーチと対抗報道(集英社新書

著者:角南 圭祐さん

著者の角南さんは、フリージャーナリストを経て、

共同通信のジャーナリストをされている方で、

日韓を通して、取材を長くされている、と著書内で紹介されています。

 

2.内容まとめ

著者のこれまでの取材から、ヘイトスピーチについての

現状と問題が、ヘイトスピーチが行われている現場、ネット、

条例などで規制しようとしている行政、またそれを報じるマスコミ側、

で起こっていることを解説しています。

 

中盤から後半にかけては、ヘイトスピーチの内容に対する検証を

行っています。ヘイトスピーチの根拠となっている内容と、

実際の内容についてのすり合わせがされています。

その中では、声の大きな人が、情報をかき消してしまっている様子

もうかがわれます。

 

全体を通して、長年、韓国と日本を行き来する中で、

両面から著者が取材を行ってきた積み重ねから、

ヘイトスピーチを行う側だけではなく、それを取り巻く、国、行政、マスコミ、

カウンター(ヘイトスピーチに直接反対行動をとる人たち)

様々な立場がヘイトスピーチにどのように向かっているかを解説しています。

 

ヘイトスピーチの入門書」と著者が位置づける本ですが、

マスコミでは報じていない、取材に基づいた

日本におけるヘイトスピーチの過去から現在までの流れが、

十分に理解できる本だと思います。

 

3.感想とまとめ

著者は、ヘイトスピーチは制度や具体的な抑制策を用いて、

防ぐ立場でこの本を書いていると感じます。

ヘイトスピーチは組織的に行われるケースがほとんどですので、

やはり著者の長年の取材に基づく深刻な現状からうかがえるものがあると

理解できるぐらい、ヘイトスピーチの根の深さを理解できます。

 

普段、このブログでは、セルフメンタルケアにふれている書籍が多いです。

差別は、個人の心が生み出すもの、妬みや自分自身が抱える不満や不安を、

形を変えて他の人にぶつけることで、満たされない自分を守ろうと

している心の作用、とされているものが多く、

それはそれで間違っていないと思いますが、

ヘイトスピーチは、集団でそれを補強し合うもので、

その背景には、ヘイトスピーチを行う人の心の不満だけでは片づけられない、

また、それを煽ったり取りまとめることで、保身を図ったり、

自身の立身出世に利用したりする人たちの存在など、

個人の心の問題だけでは解決できない難しさを痛感する書籍です。

 

著者はあくまで一貫してヘイトスピーチの反対と、

ヘイトスピーチの根拠の検証を行っています。

その根拠は、冒頭をはじめ、たびたび文中に出ますが、

ヘイトスピーチは、やがてヘイトクライムを生み、ジェノサイドを

発生させてしまう、という歴史上からの警鐘からで、

とても納得できるものでした。

あと、ほとんどの場合は、誰かが個人的、一部の組織的利益や、

人々を煽って求心力を得る目的であったり、

他の不都合な真実から目を背けさせる為に

差別感情を悪用していていることもほとんどで、

後から振り返ると明らかなのに、渦中にいると気づかない

そんな危うい「正義」を自分たちは信じてしまうことを

疑い続ける必要を感じさせます。

 

ネットでの差別感情に基づくコメントは、

著書内にもある、レイシャルハラスメントやヘイトスピーチにあたります。

正義の為なら、何を言ってもやっても構わない、

その考え方に至るまでの危うさと、行きつく先を

考えるきっかけになる本だと思います。

 

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