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最新のジェンダー史を学ぶ【ジェンダー分析で学ぶ 女性史入門】

0.はじめに

ジェンダー問題はLGBTQを除いても、

男性対女性の二元論では済まない、

多様性を認め合う必要が大きな分野だと考えています。

理由として「ジェンダー」と「セックス」の違いが挙げられます。

セックスは、生物学上、また生殖機能・役割の違いの事で、

この違いは、人間有史変わっていません。

比べて、ジェンダーは、「社会的・文化的な性差」を指し、

いわゆる「男らしさ」「女らしさ」の違いで、

こちらは、歴史、文化に基づいたものなので、常に変化を続けています。

また、概念的なものなので、個人の認識の差も生まれる為、

なかなかすり合わない部分が生まれます。

いわゆるジェンダー問題です。

 

ジェンダーに対する考え方の難しさは、

男性同士の中でも、女性同士の中でも、意見が分かれてしまうところです。

ジェンダー問題は、決定事項を生むよりも、

多様性をどれだけ受け入れていくか、

また、読書の際でも、より多くの視点を持つ必要がある、

といつも考えさせられます。

自分らしさの数だけ、ジェンダー論があるのではないかと

ちょっとオーバーですが、考えてしまいます。

 

今回は、その考え方のベースとなる、

「女性史」を学ぶ書籍を紹介いたします。

近年、歴史の考え方は変化を重ねています。

従来、歴史の教科書に書いてあったことは、随分と変わってきました。

その中で、歴史上での女性の有り方も随分見方が変わっています。

従来の「男らしい」「女らしい」という

ジェンダー問題の根っこにある部分の見方の再形成にも

大いに役立つ書籍です。

 

今回の目次です。

 

1.紹介する本

ジェンダー分析で学ぶ 女性史入門」(岩波書店

著者:総合女性史学会

14人の研究者による共著になっています。

名前だけ見ると、硬い専門的な書籍と思われてしまうかもしれませんが、

とても読みやすいトピックを選んで、読み進めやすく

まとめていただいてる本だと思います。

 

2.内容まとめ

冒頭で、「ジェンダー分析の実例をわかりやすく、

面白く伝えようとする企画である」と、ねらいが示される通り、

今までの歴史観を変える要素を感じさせる、興味深い内容です。

この本に出てくる「ジェンダー分析」とは、

全ての史実に、性差の検証を重ねるという「ジェンダー視点の導入」、

が加えられることと定義されています。

その新しい分析を導入することで得られた、歴史の見方が挙げられています。

主に日本史を中心に、古代、中世、近世、近現代それぞれに

トピックを挙げて紹介されています。

 

例えば、古代では女性埴輪の話、近世では、浄瑠璃遊郭、遊女の話など、

興味を持ちやすいトピックに対して、

女性の社会的な位置づけに対して分析を重ねています。

終盤では、男性史、LGBTの歴史、

商業的性搾取の歴史に対して、論じられています。

 

3.感想とまとめ

何となく、考えがちな傾向として、古代に向かうほど、

性別とジェンダーは原則的になって、男女差別と言われるものは極端で、

歴史が進むほどにジェンダー差は減っている、と思いがちですが、

その先入観は異なるものだと、認識を改めさせてもらえます。

 

これまでの歴史認識が、それを認識する証拠がなくても、

男らしさ、女らしさがあったに違いないという思い込みの上で、

歴史認識を構築してきたものを、いったん取り払って、

文献、遺構から証拠となるものを冷静に読み取ることで、その時代ごとの

ジェンダー認識を再構築を行う作業を行っています。

 

この考え方はジェンダー問題そのものの解法に通じるものでは

ないかと考えられます。

「こうあるべきだ」「こうあってほしい」はいったん脇において、

客観的に考え直すこと、

特に終盤で述べられている、LGBTの研究においては、

当事者主義で語られがちなLGBTの問題を、歴史的研究に

おいては、非当事者での観点も有効だと書かれている点については、

賛同できる点です。

「自分らしさ」の多様性を認めることと

「ひとりよがり」として無関心、無理解で突き放したり、

当事者と非当事者の認識と乖離してしまうことは

ちょっとしたバランス感覚で変わってしまうことだと感じます。

歴史認識だけに限らず、当事者と非当事者の協力は、

理解を拡げていくためにも、重要だと思われます。

 

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