一方的な批判・非難ばかりのSNS、いじめについて考える読書ブログ

少しでも心のモヤモヤが晴れて、心が優しく、強く感じられるように。

ポピュリズムとは何か、今の日本は古代ギリシャの再現か?【暴走するポピュリズム】

0.はじめに

ポピュリズムってご存じですか?

今回の選挙でも、この言葉が散見されます。

私は、世界史の授業で、古代ギリシャでの

衆愚政治」という意味で習いました。

 

古代ギリシャアテナイという国(今のギリシャの首都アテナの古い名前)

での衆愚政治は、民衆から議員をくじ引きで決める制度で、

リーダーシップや専門知識の無い人が政治に関わった為、

民主主義が成立しなくなった。とあります。

今の利権政治や汚職も問題だと思いますが、

これはこれで、公平ならば民主主義、という訳ではないことはわかります。

 

この後、疫病が原因でアテナイはスパルタとの戦いに敗れ、

民主主義は、一部の人に政治地位を独占された形で国力は衰退し、

アレクサンドロス大王に支配された後、ローマ帝国支配下になります。

 

ってあれあれ?2500年前の話とは思えない話で、

民主主義が不完全で、さらに腐敗して、新型ウィルスが流行して、

経済戦争に近隣諸国に負けて、どこの国に支配されてしまうの?

なんて歴史はまさに繰り返してしまうのかな、

などと、ちょっと笑い話では済まないくらい、恐ろしく思ってしまいます。

 

今回は、そんなポピュリズムについての書籍を紹介いたします。

現代の国内、世界でのポピュリズムについて学ぶことができます。

古代ギリシャの様な話ではありませんが、

現在、そしてこれから起こりそうな状況に危機感を感じられる一冊です。

政治ニュースの見方は確実に変わります。

 

一番気になるポピュリズムのデメリットは

この記事後半の感想とまとめ、のパートで紹介しています。

 

今回の目次です。

 

1.紹介する本

「暴走するポピュリズム-日本と世界の政治危機」(筑摩選書)

著者:有馬 晋作さん

著者の有馬さんは、行政での長い勤務経験から、

現在は、行政学地方自治論を専門とされる大学教授の方と、

著書内で紹介されています。

他にもポピュリズムに関する著書があります。

 

2.内容まとめ

国内で、ポピュリズム、ポピュリストという言葉はいつ頃から、

出始めたのか、から始まります。

続き、政治学上のポピュリストの定義が挙げられています。

とても重要なので、一部引用させていただきます。

まずは大分して、

・固定的な支持基盤を超え、幅広く国民に直接訴える政治スタイル

・「人民」の立場から既成政治やエリートを批判する政治運動

次に形態として

イデオロギーとしてのポピュリズム

 世の中を「純粋な人民」と「腐敗したエリート」に分類し、

 「人民の総意による主権」をする思想。

・政治戦略としてのポピュリズム

 カリスマ性の強い指導者が大衆に直接訴えかけることで、

 政治権力を行使しようとする行為。

・コミュニケーションスタイルとしてのポピュリズム

 演説やメディアを通じて大衆と直接接する政治手法。

これらの形態と、ナショナリズムを組み合わせて、

ポピュリズムは展開されていくと紹介されています。

また、分析の概念なので、

マスメディアがポピュリズムを指摘することは必ずしも起こらず、

後から分析される可能性があることも述べられています。

 

その後に、

・90年代からの国内でのポピュリズム

・国内の地方政治でのポピュリズム

・日本政治でのポピュリズム

・海外でのポピュリズム

がそれぞれ紹介されています。

よく知る政治家、現在進行中の知事の話、

誰もがピンとくる元大統領の話などが、

ポピュリズムの観点から解説されています。

 

後半に、とても大事なことですが、

ポピュリズムが最終的に引き起こしやすい民主主義、

自由主義の崩壊につながる流れを挙げて、

その防止の為に、ポピュリズムにどう立ち向かっていくかが論じられます。

 

現在の国内情勢、政治の状況と照らし合わせて、その懸念点が挙がりますが、

著者は、日本ではポピュリズムが育ちにくいとして、

その理由を、欧米との違いから、日本でこれから起きる可能性のある要素を

解説しています。

 

最後に、現在の日本で懸念される、権威主義の伸長、

コロナウィルスと民主主義について著者の分析がされています。

 

3.感想とまとめ

現在の日本や世界での政治を考える上で、

そして民主主義とは何かを知る上で、とても有益な一冊だと思います。

そこそこ読みごたえはありますが、繰り返してしまいますが、

政治ニュースの見方は確実に変わると思います。

 

著書内で、これから日本でポピュリズムが台頭する可能性として

所得格差の拡大と、外国人労働者の問題を挙げています。

私たちのよく知るところでは、先のアメリカ大統領選挙は、

この2点は大きな争点になっていたと思われます。

選挙中は、メディア不信から、陰謀論も出現し、

コミュニケーション不全や国民の分断も起こりました。

 

一番大事だともいえる、

ポピュリズムの台頭の大きなデメリットは

多元主義、反リベラル(反自由主義)な政治勢力が台頭してしまうことで、

一部要約ですが、

・権力分立や民主主義の軽視

・対立相手の根拠なき批判など、政治対立の批判

・暴力の許容、促進

・対立相手の自由を奪おうとする

などの行動が挙げられていますが、

国内外で実際に思い当たることがたくさん出てきます。

 

市民との対話、わかりやすい説明を、

一概にポピュリズムと否定することは、間違いだと理解できると思います。

ポピュリスト イコール 「悪」として

簡単なレッテル貼りに使うことも容易に想像され、

ことばに釣られない視点も必要だと感じます。

 

著書内で挙げられている事例はいずれも興味深いものばかりなので、

その政治手法、行動の先にあるものをよく見る為の

知識としてよく知っておくべきだと強く感じられます。

個々の政治批判のニュアンスを揚げ足取り的に読むのではなく、

ポピュリズム、ポピュリストを分析する知識を得る観点で

読むべき本だと思います。

 

関連記事

hanasakutarou.hatenablog.com

hanasakutarou.hatenablog.com

hanasakutarou.hatenablog.com