一方的な批判・非難ばかりのSNS、いじめについて考える読書ブログ

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平等な社会と政治とは何か【不平等を考える】

0.はじめに

この記事を書いている2021年11月中旬現在、

ネットでは、コロナ対策の10万円の給付金について、議論に沸いています。

誰に、どのような線引きで渡すべきなのか、

また渡すべきでないのかが議論の内容ですが、

一つは給付に対する、政治的な目的を果たしているかという点、

もう一つ、よく出てくることばが「不平等」ということばです。

 

平等なら全員だろうとなるのですが、

既に10万円の価値が人によって平等ではありません。

年収1000万の人の10万円と、年収100万円の人の10万円は

使い方は大きく変わるでしょう。

10万円の緊急性も平等ではありません。

10万円の財源はもちろん税金から出されるわけですが、

納税額ももちろん違います。

 

ネットでは、「誰かが得をする話」を批判するのが大好物なので、

自分に10万円が入らない話は、全て批判されます。

ヤフーコメントなどでは、全員に一律10万円以外は反対の声が

ほぼほとんどで、自分以外が得をする話には、

様々な理由で批判が重なります。

 

今回紹介させていただくのは、

政治の平等性について考察されている書籍です。

「親ガチャ」「国ガチャ」など、

生まれた時からすでに大きな格差は生まれ、

平等な社会ではないという、批判にも諦めとも取れる話は、

近年多く聞かれますが、その中で今回は政治が目指す平等性、

について考えてみます。

 

今回の目次です。

 

1.紹介する本

「不平等を考える -政治理論入門」(ちくま新書

著者:齋藤 純一さん

著者の齋藤さんは、政治学の専門の学者の方になります。

政治学の著書の他、海外の政治の書籍の訳書も出版されています。

 

2.内容まとめ

拡大を続ける格差の問題に対して、市民が政治にどう向き合っていくべきか、

をテーマに「平等」のあり方を考える内容の書籍です。

この書籍を通して重要な、「市民として」が定義づけされています。

「市民として」というのは、社会の制度を他社と共有し、

その制度のあり方を決めることができる立場にある者として、

という意味である。

それぞれ個人の立場から見て合理的であるかどうかを考えることと、

互いの立場を考慮しながら、ともに受け入れるべきものとして、

何が理にかなってかを市民として考えることは、

「正義論」の著者 J・ロールズも言うように、異なっている。

 

この「市民として」の定義を基に

・平等な関係とは何か

何を平等にするのか、逆に不平等を正当とするのか、が論じられます。

個人の選択に対する結果を、全て個人の責任としてしまうのか、

本人のいかんともできない状況に対して、どこまで「運の平等」を行うべきなのか、

また、補償を行う中で、どこまで平等な関係を保ち、

自尊を保てるようにするのか、などが解説されます。

 

・社会的な不平等を軽減する社会保障とは何か

一般的にセーフティーネットとして考えられている社会保障について、

どの不平等を解消し、どの平等を確保するべきなのか、

社会的な連帯を保ちながら、自律を保ち、さらに社会参加や活躍を

促していくのか、福祉と資本主義の関係の問題と新しいアプローチが

論じられます。

 

・政治的平等の規範とされるデモクラシーについて

選挙を通じて代表者を選ぶことができる、市民に与えられている、

最小限のデモクラシーが、どのような正当性と役割をもつのか、

また必要な、熟議の能力と市民との関係、政治の自由と平等について、

解説されています。

 

3.感想とまとめ

冒頭で定義される、「市民として」の定義は、

平等を考える上で非常に大事な目線であることを強く感じさせます。

よく、主語を「国民」とするネットでのコメント、意見が見られますが、

大体は、自分の立場が中心で、多くの人も同じこと考えているに違いない、

という思いが念頭にあることを感じさせますが、

政治的な平等の考え方においては、自分の立場での合理性ではなく、

他社の立場を考えた上で、とされる点は重要な点だと思われます。

 

セーフティネットを受ける人たちを

保護、救済される立場として平等と見ることができない社会のあり方は、

平等な社会の大きな妨げになっていることにふれ、

立場に違いに対して、機会の平等を保障できない、

単純な多数による短絡的な考え方のみを尊重すると、

ポピュリズムが繰り返され、時に非常に危険な方向に政治が向かうことを懸念し、

熟議が必要なことが著書の冒頭と最後で論じられます。

 

先述しましたが、自分よりも得をしている人がいることを不平等と

考えてしまっていたり、発信していることが多く見られますが、

自分が考える不平等は、「市民として」考えた場合、

どうなのか、目線をもらうことができる貴重な本だと思います。

社会で起こっている「不平等」に対して、

社会がどのように対応していくのか、ということに関して、

考え方が詳しく書かれています。

「不平等」なことが気になったり、コメントをする上では、

一度読んでおきたい本では、と考えます。

 

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