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一億総中流から向かう先はどこなのか【上級国民/下級国民】

0.はじめに

2019年に、東京で起きたいたましい自動車事故を機に、

「上級国民」ということばはよく聞くようになりました。

特徴的だったのは、単純に経済的な格差を表現するだけではなく、

何か悪いことをしても、社会的に高い地位があると、

本来強く罰せられることでも、見逃されるという特権的な扱いに

大きな不満を感じさせる意味合いを含むことでした。

 

今回紹介させていただくのは、

上級国民、下級国民に代表される格差について論じている書籍になります。

現政権でも、「分厚い中間層」ということばが使われて

「一億総中流」と呼ばれた社会はもう過去となったことが、

より明確になっています。

経済格差に始まり、ネット内の差別感情も論じている、興味深い書籍です。

 

今回の目次です。

 

1.紹介する本

「上級国民/下級国民」(小学館新書)

著書:橘 玲(たちばな あきら)さん

著者の橘さんは、経済関係の著書が多い作家の方で、

このブログでも橘さんの別の書籍を紹介させていただいています。

 

2.内容まとめ

タイトル通り、上級国民と下級国民の違いについて論じられます。

序盤では、下級国民がなぜ生み出されたのか、

また、令和の時代において、どう変化してきたのかが解説されます。

団塊の世代を雇用を守る為に、若い世代の雇用環境が崩れてしまい、

引きこもりが多くなったり、投資のリターンが少ないことで、

日本の市場の魅力が低下したことでのGDPの成長率が鈍化してしまった現実、

経済と社会の構造変化が解説されます。

 

さらに令和に入り、さらに進む高齢化、

最低賃金の上昇により招かれるのが、機械化などの労働市場の縮小で、

さらに大きな格差と労働市場が待っていることなど

厳しい未来予想が述べられます。

 

中盤からは、「モテ」と「非モテ」の格差について、

様々なファクトを用いて著者の見解が論じられます。

「モテ」とは文字通り、異性にモテる(リア充)人という意味と共に、

財産や社会的地位を「持てる」ことの2つの意味で論じています。

日本が「非モテ」に厳しい社会に進んでいくことで、

現代の不寛容な社会の風潮につながっていると著者は主張しています。

 

終盤は、世界で起こる上級市民、下級市民の格差と分断について

世界での事例を踏まえて解説されます。

著者はリベラル派の立場で知られていますが、

リベラル、保守の流れの変化が世界の社会構造をどのようにもたらしているかが

拡大する格差と分断の論拠とされ、解説されます。

 

エピローグでは、現代の状況の延長に予想される、

著者が考える未来が描かれ、とても興味深い内容になっています。

 

3.感想とまとめ

今までも、著者の他の書籍も紹介させていただいていますが、

いつも、アマゾンなどの書評は賛否が分かれる著者で、

今回も同様に賛否が分かれます。

理由は、内容がいつも、うすうす感じていながらも、

直視しにくい世の中の現実がまざまざと、

突き付けられる感じがあるからだと思われます。

 

個人的に考える、書評が分かれるポイントは、

読書慣れしてる方か、たまに読まれる方かの違いかという点、

また、いわゆるネット民を酷評する向きがあるので、

ネット民からの評判が良くない、の2点かなと感じます。

 

たまに読書をして、何らか前向きになったり、

読書の利益を得ようと考えた場合、この本は世の中に対する提言は少ないので、

「言いっぱなし」感はあるかもしれません。

社会評論は、必ずしも解決策を示すことが目的ではなく、

現状把握を行うことも大きな目的で、必ずしも「オチ」はある訳ではありません。

「下級国民だと思うあなたが、上級国民になるには」みたいな攻略本ではなく、

むしろ、社会構造の根の深さと積み上げられた時間の長さに、

絶望感を感想として持たれる方もいるかもしれません。

現代社会の中の一つの意見として読まれることをおススメします。

 

絶望論のみを並べているわけではなく、

その社会の特性を理解して、個人として上手く生きていくことが、

この格差社会を生き抜くためのアドバイスとして書かれています。

 

たまに社会評論が役に立つのか、という意見も伺いますが、

近年頻発する、無差別におこる刺傷事件などに対して、

すぐに身を護ることにはならないのかもしれませんが、

不寛容な社会に対する社会構造の原因に踏み込んで、

一つ一つ読み解いていくことは、大変有効だと考えています。

社会の不寛容を感じて、不安で悲しかったり虚しくなってしまことも

軽減されるのではないかと思います。

願わくば、社会の構造の改善につながる動きになっていくことや、

参加していくことにつながっていけば、と考えています。

 

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