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日本学術会議 任命拒否問題の検証【学問の自由が危ない】

0.はじめに

2020年9月からはじまった、日本学術会議の会員の任命拒否の問題は、

それまであまり知られていなかった、学術会議という組織の、

成立の背景から役割、運営、任命人事に関することが明らかになりました。

 

ネットやマスコミは、会議が一種の既得権益となっていること、

いわゆる「御用学者」が雇い主のお上にたてつくな、という視点が目立ち、

任命をしなかった理由の公開を望まれていたのに、

学術会議そのもののあり方に論点がすり替えられた形になっています。

問題とする側は、今の日本国内の政治運営に

都合の悪いコメントや研究をする人を任命していない、

という問題を挙げましたが、人事の事につき、

公開できないとの答えに終始しています。

 

今回紹介させていただくのは、

学者側からの学術会議の任命問題についての反論になります。

学問の危機を訴える、この事件の何が本当に問題なのか、

とても興味深い内容になっています。

 

今回の目次です。

 

1.紹介する本

「学問の自由が危ない 日本学術会議問題の深層」(晶文社

編者:佐藤学さん、上野千鶴子さん、内田樹さん

皆さま著名な方ですが一応、編者の紹介をさせていただくと、

佐藤さんは、教育関係の専門の方で、

上野さんは、ジェンダー関係に著名な方で著書も多く、

内田さんは、主に思想論などでベストセラーも多い方です。

 

余談ですが、内田さんと上野さんは、お互いの思想・発言において、

誌面上でバトルを繰り広げるなど、仲が悪いことで有名ですが、

その二人が危機感を共有して、共に編者として名前を連ねているのは、

如何にこの事件に対して大きな問題をはらんでいるかが、

著書内でもふれられています。

他にも津田大介さんなど、学術会員の方以外も共著に入っていて、

単に、学者の方が反論をしているにとどまらないメンバー構成です。

 

2.内容まとめ

総勢13名の方の共著になります。

それぞれの方が、今回の学術会議の任命拒否の問題について論じています。

ネットやワイドショーで語られた問題への反論的な内容もあれば、

憲法、法律上からの立場に対して論じている部分、

任命拒否問題が学問の自由を損ねてしまい、非常に危険であることなど、

それぞれの視点で、今回の事件での危機感を論じています。

最後には、資料編として任命拒否を受けた6人のメッセージ、

首相にあてた要望書、日本学術会議法、声明を公表した団体一覧、

時系列のまとめも行われています。

 

3.感想とまとめ

まず、本を読む前後どちらでもいいのですが、

アマゾンの感想欄が非常に楽しめますので、是非一度ご覧いただくと、

この本の理解が深まることウケ合いです。

コメント欄には、非常に感情的な☆1が並びますが、

トータルの評価は低くありません。

感性に訴える書籍や、よほど極端な内容の書籍でない場合、

だいたいこういうケースは、興味深い、面白い書籍が多いです。

きっと読んで欲しくない人、それなりにいるんだろうな、という印象です。

 

批判的な意見が聞き入れられない、発言することを許さない組織は、

国家はもってのほか、企業、教育組織など、

あらゆる人の集まりにおいて、望ましい形ではないことは明らかで、

学術会議のあり方と、任命拒否の問題は、

分けて考えるべき問題だと思われます。

 

まず、任命拒否の問題については明らかにしないと、

すり替えの印象がぬぐえないばかりか、その透明性にも不信感がぬぐえず、

逆効果が重なるばかりなのが懸念されます。

すぐに飽きるマスコミや世間のゴシップならまだしも、

こと、時間をかけて論理的に検証できる相手とやり合うのは、

なかなか大変なので、早く公表してしまって総括し、

前に進めていく方が、お互いにいいのではと感じさせます。

 

新型コロナウィルスで引き起こされたコロナ禍は、

災害としての側面よりも、失政の方が大きかったとみる向きは、

時間が経ち、検証が重なるほどに高まる意見です。

 

これからも、異常気象や災害などの自然現象に対しても、

ジェンダー問題や人口減少、格差の拡大などについても、

決して為政者に都合の良いことばかりを聞くだけでは解決できない

問題が山積しているのは誰の目にも明らかなので、

この事件の早期解決が図られ、政学協力して

真に解決すべき国難へ向かい合ってほしいと思われます。

 

学術会議の批判材料に使われた、税金を原資とした予算の使われ方に

対する間違った情報への反論などももちろん行われていますが、

資料編の時系列でも、マスコミやネットでの政治家の発言は、

いつも通り、都合の良い印象操作のための、誤りのデマ情報は声高に、

間違った情報での十分な印象付けが終わった後に、

訂正、修正はひっそりと、のお決まりパターンも確認できます。

メディアリテラシーを問う書籍ではありませんが、

報じられ方には、大きな問題が残った事件であったこともうかがえます。

時間をかけた検証を行い、それを知る重要性を感じる一冊でもあります。

 

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