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少子化問題でのタブーを意識しながら、問題を直視する【[続]少子化論】

0.はじめに

国の人口が減少する「人口問題」の解決は、大きく分けると

・移民、外国人を国内に増やす

・国内の出生率を上げる

の2つの手段での解決策があります。

 

ヨーロッパでは、様々な問題に直面しながらですが、

移民を受け入れている為、人口は保てています。

実際のところ、日本は移民を忌避する傾向が強いので、

出生率の向上しか手段が残りませんし、

移民を受け入れるとしても、自国民の減少は食い止める必要性からも、

出生率の向上は必須という意見は多く見受けられます。

 

先日、2021年の日本の人口が発表されましたが、

日本人が約37万人、外国人が約5万人減って計42万人減少しました。

よく、極論好きの人がたとえ話で使われますが、

県庁所在地ならば、高松市長崎市あたりが無くなってしまうぐらいの減少です。

2年で山梨県、3年で鳥取県島根県が無くなってしまう計算です。

実際にはそんなことはもちろんありませんが、

深刻さは伝わる例えだとは思います。

 

さらに単純に人口が減るだけではなく、高齢者と若者世代の

バランスが悪くなり、高齢化率か一気に高まる問題も、

同時に非常に大きな問題になっています。

高齢者を中心とした社会福祉の必要性が大きくなり、

減少する働く世代では支えきれない問題に発展しています。

 

ただ、少子化問題の解決に対しての議論は、

その問題の前に、「出産をしない自由を尊重する」という観点から

出生率回復の議論は、大きな議論となることはありませんでした。

たしかに、「産むべき」「産まないといけない」という風潮や同調圧力

発生させてはいけません。

 

今回紹介させていただく書籍は、

その両立を考える提言を行っている観点で書かれています。

少子化に問題提起をしている本は実にたくさんありますが、

解決策の提言は、実に少ない現状の中では貴重な書籍だと思います。

 

今回の目次です。

 

1.紹介する本

「[続]少子化論 出生率回復と<自由な社会>」(学文社

著者:松田 茂樹さん

著者は、家族社会学少子化論の専門家で、

国の少子化対策の委員などにも名前を連ねる方と著書内で紹介されています。

 

2.内容まとめ

現在の国内の少子化問題の現在、問題の背景といきさつ、

過去の政策の進捗状況や問題点、

現在の問題の細かい分析で、エリア分析においては、

若年層の雇用状況との関連性が細かく解説されます。

 

また、海外の他の先進国との比較、

海外において少子化が問題となっている国の政策と

人口動態、成功例・失敗例が国民性の比較と一緒に紹介されます。

 

最後は、2020年段階での提言と方向性が提言されます。

若者層に直接とどくもの、周辺環境を整えるものなどに

まんべんなく提言が行われています。

 

3.感想とまとめ

国内の少子化対策の、ある意味最前線にいらっしゃる専門家の提言と

いうこともあって、丁寧にその危機感を伝えています。

本の帯で釣るような、変な煽りはありませんが、

その分、真に進めなくてはいけない切迫感も感じられます。

序章においては、

「社会の存続」と「個人の自由」の問題をどう仲裁すべきだろうか。

あとがきには、

従来目を背けられてきた、結婚・出生についての<個人の選択の自由>と

人口面での<社会の存続>が対立することの問題に正面から向き合い、

筆者が考えるその解決のための方法を提案している。

と、出生率を論じることは、個人の自由を侵すとして、

両立が避けられてきたことに対して向き合おうとしているのが特徴的です。

 

個人の自由が、社会の存続の上に成り立っている場合、

個人の自由を尊重する人にも、社会の存続の議論からは逃れられない、

という考え方は、もう避けられない議論なのかもしれません。

今まで、社会の存続を想定して築いてきたインフラを

個人の人生の間の自由な消費のみで、ハイおしまい、とはなかなかいかず、

出産、結婚に関わらず、社会の存続は強く議論されなくてはならず、

その中の一つの議題としての出生率の向上を考える順番なのでは、と感じます。

 

提言は、ある意味非常に堅実です。

きっと目を引くキャッチーなものも求められているのかもしれませんが、

目玉政策みたいなものはなく、一つ一つ原因に対する対応策が

解説されている形になります。

長期化してしまい、根が深くなった反面、分析も進んでいますが、

残り時間も少ない状況もうかがえます。

 

一番大切なのは、「まあ、将来も何とかなるか」と思える、

一種の感覚がカギなのだと思われます。

もちろん一つ一つの問題解決に取組みながらの上ですが、

未来に対する100点満点の保証が必要なのではなくて、

きっかけのような何か突破口なのかな、と個人的には思われます。

 

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