一方的な批判・非難ばかりのSNS、いじめについて考える読書ブログ

少しでも心のモヤモヤが晴れて、心が優しく、強く感じられるように。

マイノリティの世界を素敵な切り口で【マイノリティデザイン】

0.はじめに

2021年に開催された東京パラリンピックは、

自国開催なこともあって、多くの競技、選手が注目されました。

今まで知らなかった競技、知らなかった選手が

練習と熱意を実らせて活躍する様子を見るのは、

無観客のテレビ越しでも、十分に感動させていただきました。

 

ゴタゴタの中、滑り込んだ感の多かったオリンピックに対して、

その陰になって地道に準備ができていたおかげか、

開会式から閉会式まで、とても充実していたのではと感じます。

 

個人的には、パラリンピックの見方が大きく変わりました。

よく知らずに、オリンピックの障害者版だと偏った見方をしていましたが、

純粋にスポーツとして面白く、スリルと興奮を感じて、

とても楽しむことができました。

迫力と躍動感、テクニックやメンタル、ゲーム戦略など、

他のオリンピック競技やプロスポーツと何も変わらないものでした。

障害に負けないでスポーツを頑張っている、という感情ではなく、

純粋に選手が躍動する姿がカッコいいと思って観戦していました。

以前の見方が偏っていたかは別として、

同じような感想を持たれた方も多かったのではないでしょうか。

 

障害者の方に関わらず、マイノリティの方々は

不自由なことに耐えたり、それを乗り越える様子を見せ、

感動させなくてはいけない、という「感動ポルノ」という

問題提起もされ、パラリンピックも同じことなのではないか、

と揶揄する意見もありましたが、随分イメージが変わった、

という意見も多く聞かれました。

 

今回紹介させていただくのは、

ちょっとデザイン不足だった、マイノリティの世界に、

かっこいいコピーをつけていく、ちょっと変わった書籍です。

とても素敵な本なので、おススメです。

 

今回の目次です。

 

1.紹介する本

「マイノリティデザイン」(ライツ社)

著者:澤田 智洋さん

著者の澤田さんは、コピーライターで様々な実績が著書内で紹介されています。

また、様々な障害者の活動への取組もされていらっしゃいます。

 

2.内容まとめ

コピーライターの著者が障害者を中心としたマイノリティと、

それに関わる方々を、著者が創り出す素敵なキャッチコピーを中心に、

新しい価値観をデザインしていく著書になります。

著者の息子さんが視覚に障害を持って生まれてきたことを知った時に、

子どもに著者がしている広告関係の仕事が、視覚的に伝えることが

出来ないことに、大きな迷いを持った中で、

何ができるのだろうか、と考えたところから、話が始まります。

 

著者が持つ、広告で培ったスキルである、価値創造の面から、

マイノリティの世界を魅力的にデザインして伝えたり、

生きやすい社会にすることができないか、という試みが行われています。

 

また、著者が仕事を続けてきた広告を中心とした、

クリエイターの仕事のあり方、方向性についての思索も論じられています。

使い捨てで、新しいものを追い続けるデザインから、

持続可能なデザインとは何か、弱さを活かし、楽しむデザインとは何か、

著者が活動を行う「ゆるスポーツ」の紹介も含めて解説されます。

 

身体だけではなく、様々な面でのマジョリティ、マイノリティに関係なく、

社会が色々な方に関わっていきやすいような提案を行っています。

セクションごとのタイトルは、章を区切るタイトルというよりは、

一つ一つがキャッチコピーとして成立するようなことばで書かれていて、

それを追いかけるだけでも、とても気分よく読み進めていくことができます。

 

タイトルにあるマイノリティのことだけではなく、

持続可能な社会へのあり方も興味深く述べられていて、一読の価値ありです。

 

3.感想とまとめ

ちょっと今までにはない、「カッコいい」マイノリティの書籍です。

他社、他者を出し抜いてなんぼの業界の方が、

他者との共存の為にデザインを行うと、このようになるのか、と感動を覚えます。

もちろん、著者の環境や多岐に渡る活動から生み出されたものですが、

最近、義足のモデルの方がファッションショーに出演されたり、

車椅子の方が、ファッション誌に登場されたりなど、

ビジュアル的な活動も見られる様になってきましたが、

それを盛り上げるコピーの効果について思い知ります。

 

どうしても、障害などのマイノリティの由来となる部分は、

弱い部分で、その弱さを補う努力をしたり、克服したりすることが

正しいとされたり、求められる風潮もありますが、

弱いところをコンプレックスにして、隠すのではなく、

著書内で紹介されている、

弱いところ = 他の人にはない部分 = 自分の特長にしてしまう

という考え方は、さすが広告関係の方だと感じました。

 

社会問題を様々な方法でデザインし直し、

努力と苦しみで乗り越えていくよりも、

みんなで楽しくポジティブに取り組んでいく試みが

拡がっていくきっかけになるといいなあと感じる一冊です。

著者の澤田さんの活動も注目です。

 

関連記事

hanasakutarou.hatenablog.com

hanasakutarou.hatenablog.com

hanasakutarou.hatenablog.com