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少しでも心のモヤモヤが晴れて、心が優しく、強く感じられるように。

やさしく、読みやすい差別問題にふれたベストセラー書籍【ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー】

0.はじめに

差別問題の書籍は、その解消にせまるほど、

差別の現状に向かい合って、他者の悪意や、

自分自身の差別感情にも向き合うことになるので、

良書ほど、読むのにエネルギーを使うことも多く、

なかなか読みやすい差別問題に関する書籍って少ないな、と思います。

 

その中で、今回紹介させていただくのは、

読みやすい、差別問題のノンフィクション作品になります。

壮絶なノンフィクションルポタージュというよりは、

海外在住の方が直面している日常的かつ深刻な差別問題について、

小説の様に読みやすく描いている作品、となるでしょうか。

 

海外の話と捉えてしまう書評などもありますが、

決して外国の話とはいいきれない様々な問題を

浮き彫りにしてもらえます。

 

今回の目次です。

 

1.紹介する本

「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」 (新潮文庫
著書:ブレイディみかこ さん

ベストセラー、受賞歴多数で、ご覧いただいた方も多いかもしれませんが、

第一巻であるこの本は2021年に文庫化されて、より手に取りやすくなっています。

作者のブレイディみかこさんは、イギリス在住の保育士、ライターという

肩書の方ですが、著書も多く、この本は続編の2も発刊されています。

 

2.内容まとめ

イギリスの白人労働者階級が集まる中学校に通うことになった、

日本人の著者を母に、アイルランド人の父親の持つ息子さんが、

学校生活を中心に、人種、経済格差、ジェンダーなどの差別問題に直面します。

それにまつわる万引き、いじめ、暴力、デモの参加などの政治対立など、

様々な社会問題を目の当たりにすることになります。

 

小学校では生徒会長もしていた、まじめな優等生で、

思春期の多感さ持つ息子さんと、「パンクな母ちゃん」の著者は、

一緒に悩みながら、それらの問題を乗り越えていきます。

子どもの問題だけではなく、当然ながら著者も様々な問題に

ぶつかりながら、固定観念や差別を作り出す大人の問題や、

それが子どもや社会に伝播していることも痛感します。

 

著書の中では、イギリスを中心としたEUの教育や制度の違いにもふれています。

日本の道徳の授業にあたる、

シティズンシップ・エデュケーション(公民教育)の充実の紹介で、

同著者の別著書「他者の靴を履く アナーキック・エンパシーのすすめ」

でも解説されている、シンパシー(同感)とエンパシー(共感)の違い

にもふれられています。

 

リアルな体験に基づいた著作ながらも、

明るく、前向きに、でもまじめに向かい合う様子が読みやすい調子で

まとめられている、納得のベストセラーです。

 

3.感想とまとめ

よく、書評でこの本がノンフィクションではなく、

小説やエッセイになるのではないかということが書かれていますが、

あまりジャンルや描き方について論じるよりは、

実際に起こっている差別問題に、目を背けることなく向かい合いながら

力強く生きている様子を通じて、私たちも考える機会になれば、

と思える本だと思います。

タイトルは知ってるけど、内容は知らなかったという方は、

文庫化に合わせて是非読まれてはいかがでしょうか。

 

また、イギリスの小学校では、子どもの持つ権利についての教育も

盛んにおこなわれている様子が書かれ、それを著者の息子さんが家族と

興味深く学ぶ様子を話し合うことで得られる、著者の気づきなども述べられ

日本では、差別問題は、なんとなく家族でも避ける話題なのですが、

互いの意見を交換し合うところに、この著書の読みやすさがあると感じます。

どうしても、ノンフィクションについてまわる暗さはなく、

読み終わりがいいのも、おすすめポイントです。

 

著者の多感な息子さんの気づきの豊かさに、未来への希望を感じてしまいます。

自分が正しいと集団で思い込んでしまう危険性への気づき、

様々な考え方を行ってみることの学びを教えてもらえるところなどは、

大人の私たちこそ、と思わせてもらえます。

広く読まれることで、日本でも多様性を認めあえるきっかけになると

いいな、と願う一冊です。

 

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