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個食、孤食、共食、そして「縁食」【縁食論 孤食と共食のあいだ】

0.はじめに

孤食」ということばが問題になることがあります。

子どもが一人で寂しくご飯を食べる様子を想像させるこのことばは、

子どもの社会的なつながりが失われてしまう危機感を感じてしまいます。

 

一方で、「孤独のグルメ」など、一人メシを楽しむ

マンガ、テレビ番組も劇場版になるほど人気です。

コロナ禍で、忘年会・新年会などビジネスの飲み会・宴会は激減しましたが、

逆に望まないつきあいの会食が減ったことを歓迎する風潮もあります。

 

どうしても、食文化は、どんな素材をどう料理して食べるのか、

それはどんな味でおいしいのか、おいしくないのか、

に注目が集まります。場合によってはどんなお店で食べるかも重要ですが、

ウーバーイーツなどの配食のサービスも普及し、

お店に行かないでも、お店の味が楽しめるサービスも普及しています。

 

今回詳細させていただくのは、

「誰と」「どのように」食べるのか、

また、その中で、食べるひとたちはどんな関係性を持つのか、

それは社会・人間にどのような影響・効果をもたらすのかが書かれた、

書籍を紹介させていただきます。

食べることと、人間の関係性を考えさせてもらえる一冊です。

 

今回の目次です。

 

1.紹介する本

「縁食論 孤食と共食のあいだ」(ミシマ社)

著者:藤原 辰史さん

著者の藤原さんは、農業史、食の思想史の研究者として、

著書内で紹介されています。

他にも食を考える書籍で、多数の受賞歴も紹介されています。

 

2.内容まとめ

一冊を通して、食と社会と人間の関係を考えるトピックについての

エッセイ集になります。

特徴的なのは、タイトル通り、食の話なのですが、

グルメ的な話にはあまり触れられることはなく、

食べる際の環境、食べる時、食べる場所の周囲の人間関係からの

食文化へのトピックや考察を重ねています。

中には死者への思いにつながるような食のエピソードなど

様々な形で食を考えるきっかけも挙げられています。

 

著者は、一人で食べる「孤食」と、家族などの集団で食べる「共食」

との間にある「縁食」ということばをキーワードにしながら

孤食のリスクにふれながらも、共食に対する強制感、心の負担にもふれ、

人に心地よい食の在り方はなんなのか、という課題について

様々な事例と共に考察しています。

 

3.感想とまとめ

食に関するテーマではありますが、人間関係のあり方についての、

興味深い考察になっている書籍です。

食べることって、もちろん生命維持の為に必要なことで、

食欲は三大欲求の一つでもあるのですが、

そのことばかり考えると、一種の「補給行為」に陥ってしまうことって、

とても多いのではないでしょうか。

この本は、食べる時の周囲との関係性を考えることで、

食の重要性の一つに対して気づかされます。

 

人間関係や仕事のストレスからの解放のために、

選んで「個食」を取る、また冒頭でふれた「孤独のグルメ」のように、

食に真摯に向き合い集中するために、あえて一人で食べる、

それはそれで一つの手段だと思うのですが、それは選択の上の行為で、

食べる時の環境を選べない人たちは、同時に人間関係や社会での立場や

関係のあり方も選べていないことが理解できます。

 

孤食」の人で、選べずに孤独になってしまっている人、

逆に共同体からの強い束縛から逃れられない人、

そのいずれも、この本では食のあり方からその関係を読み解き、

それを著者の提案する「縁食」での緩やかな改善のヒントを示します。

 

まわりの人間との程よいつながりと距離感を感じられる食の摂り方から、

人間関係、ひいては社会との関係を改善していく事例の紹介は、

とてもあたたかい気持ちになることができます。

 

「食」がとても原始から続き、必須であることからか、

そこに求める関係性も、戦略的であったり複雑であることも感じさせず、

とてもシンプルながら強い力で、いいことも、悲しいことも

人間のあり方に強い影響を与える要素であることが

理解でき、心に響く内容です。

 

食べることそのものの先にあるものを知り、

人間と社会のあり方の改善を促す可能性を感じるとても興味深い書籍です。

文章、ことばが強過ぎず読みやすいことも、「縁食」の良さが伝わる、

この本と著者の魅力の一つでもあると思います。

 

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