一方的な批判・非難ばかりのSNS、いじめについて考える読書ブログ

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男性が自身の男性性を読み解く、鋭い感性の一冊【さよなら、男社会】

0.はじめに

このブログでも多数のジェンダー問題を論じた書籍を

多く紹介させていただいていますが、

ジェンダー問題の書籍の多くは、

いわゆるフェミニズム(女性解放思想)に基づいた書籍が多く、

女性が男性社会と戦う構図が描かれている傾向が感じられます。

ちなみに、ジェンダーとは、

概念としての性差のことを指し、生物的な性別とは異なり、

「男らしさ」「女らしさ」を示します。

LGBTQのあり方も絡まってきて、

ジェンダー問題は、非常に複雑な問題になっています。

 

ただ、今まで多く見られたのは、先にも述べたように

・女性が男性社会を批判する

・LGBTQの当事者が自分たちの在り方を発信する

というのが主流であるのは否めなかったと思います。

 

また、ジェンダー問題は、差別意識的な問題、働き方、

法制度的な問題などさらに問題は広がってしまい、

なかなか前進してるのか、見えにくい問題でもあり

以前の記事で紹介させていただいたように

だんだんと「とにかく許せない」がエスカレートしやすく

ツイッターでは日々争いが見られることになります。

 

今回は、その中でもかなり珍しい

男性が「男性性」「男らしさ」を振り返り、

批判している書籍を紹介させていただきます。

組織論的な多様性を求める男性社会の批判の書籍は見受けられますが、

極めて珍しい感性的に男性性を語っている本です。

有り体ですが、とてもいい本だと思います。

 

今回の目次です。

 

1.紹介する本

「さよなら、男社会」(亜紀書房

著者:尹 雄大(ゆん うんで)さん

尹さんは、インタビュアー&ライター

様々な武術を稽古した経験を基に身体論を展開している

と著書内で紹介されています。

 

2.内容まとめ

著者自身が自分の男性性について、振り返りながら

パーソナルな心情変化が赤裸々に語られる本になります。

私小説の様に捉えられるかもしれませんが、

著者の豊富なインタビューや仕事柄から生まれていると感じられる

謙虚な姿勢で男女の比較を行いながら、

自己や自身の周りの社会の男性性、ジェンダー思考を

見直す作業を行っています。

 

自身の問いに対し、真摯に向き合いながら

最終は、深いコミュニケーションと、

「男性性とは何か」という著者の総論と、そこに比較される

「女性性」が述べられます。

 

3.感想とまとめ

色々な先入観を打ち消して、読み始める必要がある本で、

結果からいうと、男女どちらも読んでみるべきと思う、

ちょっと今までになかった感じの、とても興味深い本だと思います。

 

まずは、本の表紙ですが、

白地にショッキングピンクのアクセントとタイトルから、

LGBTQを発信している著書か、との勘違いからスタートですが、

読み始めるとまずは、一回目、嬉しく裏切ってもらえます。

 

次に、導入は、ちょっと私小説的な感じも受けてしまいます。

中二病男子がオッサンになった話なのかという懸念も、

読み進めていくと、かなりいい方向に、二回目の裏切りに遭えます。

 

まず、読み応えがそこそこある本ですが

著者が「男性性」に関して、非常に誠実に自分の思い込みに向かい合い

その思い込みの理由まで踏み込んで、丁寧に語られている点は

一冊を通して非常に心地よく読み切れる、大きな要素だと感じます。

見直す作業は、非常に丁寧な自己問答による考察、

という形が多く見られます。

悪く言えば主観的な内容が書き並べられている、とも言えますが

独りよがりではない、読む人へ伝える意思が感じられ

読者の自己問答にもつながるきっかけになると思います。

 

よく、多様性の問題はコミュニケーションの問題で

コミュニケーションが多様性の問題を解決する、という話は

イヤというほど語られつくしていますが

コミュニケーションをとる自分を丁寧に掘り下げているスタンスは、

非常に大事だと痛感します。

自分が自分を掘り下げられていないのに、相手の深い理解に

至ることは、まずないだろうし

ここまで、自分を掘り下げることができる相手とならば

今、社会で問題になっている、他人との摩擦は

かなり起きにくいと感じるので

ジェンダー問題に限らず、まずはこのスタンスだ!と感じます。

 

無理やり、他人とのコミュニケーションを強要するのではなく

うまく言葉にならない感情まで、自分を丁寧に見つめなおして

いくことから始めていくことは、一人でもできることなので

まずはここから、ではないでしょうか。

 

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