一方的な批判・非難ばかりのSNS、いじめについて考える読書ブログ

少しでも心のモヤモヤが晴れて、心が優しく、強く感じられるように。

「普通」のワナから抜け出そう【「普通がいい」という病】

0.はじめに

「普通でいい」「普通がいい」「せめて普通に」

「フツーそうだろ」「普通じゃない」

 

「普通」という言葉は非常に多く使われ、

使う人はあまりに簡単に使ってくるのに、

どうしてもその感覚とずれてしまい、

この言葉の難しさに悩んだり、

苦しめられている人は非常に多いと思います。

 

かといって、一方では、

普通ということばのあいまいさ、楽さにも甘えてしまいます。

普通ってどれくらい、どんな感じ、は定義しないまま、

何も考えずに普通、普通、と使い続けています。

 

笑い話で、婚活サイトで女性が考える、

「普通」の男性像の条件を絞りこみ、

探してみたところ、なんと0.1%しかサイト内には存在しなかった、

なんて話もあります。

普通を定量化してしまったら、身長、年収など、数値化できるものは、

全て平均も、また偏差値などで考えても、

中央値を上回った数値が「普通」になってしまい、

さらに、嗜好や家族観、金銭感覚なども普通を具体化していくと、

その婚活サイト内に登録している男性という条件つきですが、

0.1%しか存在していない人になってしまったそうです。

 

また、大学の研究で、普通の顔の男女を作成したところ、

かなりイケメンと美人になってしまった、という話もあり、

平均的な、常識的な、という本来は誰にでも通じやすい、

客観的な尺度と考えられる「普通」という表現が、

いかに主観的な言葉かということです。

 

今回は、普通への向き合い方を解説している本を

紹介させていただきます。

 

今回の目次です。

 

1.紹介する本

「「普通がいい」という病」(講談社現代新書

著者:泉谷 閑示さん

著者の泉谷さんは、精神科医の方で、

他にも、うつに関する書籍、仕事や生きがいに関する書籍など

多数著書があります。

実際に症例に多くあたっている方だと思われる、

具体例の多さと、言葉の選び方が上手だと感じます。

精神科の方が、心の問題を論じている本は多いですが、

他の本を通してでも、

押しつけや、自論と他人を比べて揶揄することもなく、穏やかなので、

読んで、疲れにくい著者の方だと思います。

 

2.内容まとめ

もともと精神科医の方向けの講義を書籍化したもので、

全部で10講で構成される、読みやすくわかりやすい内容です。

 

「普通」という言葉や感覚に対しての問題から

世の中の生きづらさの解消や、自分の受け入れ方などを

豊かな引用でわかりやすく優しい言葉で解説されています。

 

「普通ではない」と区別され、「普通になりたい」という症例の紹介、

その原因となっている、言葉の背景にある意味を明らかにすることで、

自分をよく見て、自分で考える方向に向かうことを促し、

通念的なものに過ぎない「普通」にしばられる必要がない気づきに

つながっていく構成になっています。

自分に優しくなることで、他人にも寛容になることへの

著者のスタンスは、とても読み終わりも優しくなれる、良書だと思います。

 

3.感想とまとめ

言葉やコミュニケーションに関する書籍は、

いろいろな立場や、専門の方たちの

ある程度は量を読み込んだ方がいいと思います。

科学的な事象のように、全てや実験、統計、

データやグラフでは片づけられないものになるので、

色々な知識の積み重ねの上での使い分けが、

適切なコミュニケーションにつながると思います。

一冊だけでバッチリの教科書や虎の巻は、私は、今のところ出会えていません。

 

この本で取り上げられている「普通」はその背景を知ることで、

ネットでも、実社会でも、仕事でも、プライベートでも、

認識のずれを生みやすく、大事な時に、頼りにしてしまうと、

難しいことばで、気を付けなくてはいけないと感じます。

 

普通という基準に、考え方、生き方をしばられないということは、

普通という言葉の背景にある、多数派であったり、世間体にしばられず、

他人の根拠を必要としないで、自分を認めることにつながり、

考える必要はあるけども、他人に苦しめられない生き方、

ひいては、多様性の認め合うことにもつながる、

とても大事なことだと感じます。

 

普通という言葉によってもたらされる一種の安心感は、

ほとんど実体もなく、また何の保証にもなってない、

思考停止に過ぎない危険性への警告にもハッとさせられます。

身近なことばへの、気づきの多い一冊になると思います。

 

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