一方的な批判・非難ばかりのSNS、いじめについて考える読書ブログ

少しでも心のモヤモヤが晴れて、心が優しく、強く感じられるように。

いじめた経験に向き合う【聲の形(こえのかたち)】

0.はじめに

いじめ問題がなかなか改善しない原因は、

・もともと相性が合わない人たちを同じ集団(クラス)に入れながら

 「仲良くすること」を強要して、ストレスを生んでしまうこと

・加害者を生むメカニズムに焦点を当てないこと

だと考えて、書籍や映画の紹介を行ってきました。

 

今回紹介させてもらうのが、

はじめてのジャンルで、マンガ作品になります。

人気作品で、読んだことがある人もとても多いかと思いますが、

いじめの加害者、被害者、傍観者、加担者、周囲の人間、

関係性や心情がよく考えられ、表現された作品だと思います。

 

いじめ問題の一つに、いじめを悪いことと規定してしまうあまり、

悪いこと(タブー)に向き合えなくなってしまう問題があります。

自分がいじめをしている時でも、「悪いこと」をしていることに

向き合えなくなり、認められなかったり、正当化して「悪いこと」

ではないことにしてしまう、などの問題を生じてしまいます。

 

専門家の書籍や論文の専門性やエビデンスはありませんが、

子どもや学生でも、とても読みやすい、

いじめについて考えやすい書籍だと思います。

ですが、資料の様に読むべきでもなく、純粋に面白い作品です。

 

今回の目次です。

 

1.紹介する本

聲の形(こえのかたち)」(講談社 少年マガジンコミックス)

作者:大今 良時さん

作者の大今さんは、手話通訳者のお母さまの協力をいただきながら、

この作品を描かれたそうです。

まだ少年漫画では少数派の女性の漫画家の方になります。

今連載中の「不滅のあなたへ」はテレビアニメ化もされている、人気の漫画家です。

私はアニメしか見ていませんが、とても哲学的なストーリーだと感じました。

アニメは第二期が待たれますね。

 

またこの「聲の形」は、映画化もされています。

京都アニメーションによる作品で、風景画などの美しさも

作品に華を添えています。

U-NEXTで「聲の形 映画版」を視聴する

 

2.内容まとめ

小学校の時に、いじめの加害者と、そのことからの反発から、

いじめられる側になり、加害と、家族にかけてしまった迷惑への後悔と、

いじめを受けた時の人間不信を抱いている主人公の話です。

それに関わった、他の子どもたちの視点も描かれます。

加害者、被害者、傍観者、加担者、いじめ返し、

など、多くの要素が大変上手く関係づけされています。

 

その中で、高校生になり、苦しみながらも加害に向き合い、行動することで、

主人公や周囲に変化が生まれていきます。

安易な成長物語ではなく、みんなに嫌な記憶は残りながら、

少しづつ新しい情報を書き足していくようなイメージです。

消えるわけでも、上書きされる訳でもありません。

 

とてもリアルな人間感情が描かれていると感じました。

 

3.感想とまとめ

よく、いじめの厳罰化は、いじめの防止策として挙がります。

確かにエスカレートして、行き過ぎた行為には、

行為そのものに適切な罰を行うことには異論がありませんが、

いじめの撲滅にはならないと考えています。

 

また、ネットでは、「いじめをするやつは悪いやつ」

「悪いやつにはどんな誹謗中傷を行っても構わない」

「いじめをしたやつは、正義だからいじめても悪いことではない」

と価値転換をしながら、結局いじめを行います。

 

いじめの起こった原因や感情に向き合うことや共有することと、

いじめで起こった被害を償うことは、別にすべきだと考えています。

いじめた人の否定や非難は、人間そのものに対して否定や非難を行うことと、

大きくは変わらないぐらい、きっかけといじめを行ってしまう、

脳の仕組みや集団心理は誰にとっても、変わらないからです。

 

いじめられた経験のある人が、その経験を乗り越えて、

成功したストーリーを美化していくことも、過度な状態は、

危険があることも、専門家からは警鐘されています。

 

いじめられるのも、一つの人生の糧、と安易に取られてしまうからです。

多くの人は、乗り越えることはできず、

深い傷を負ったままの現実があるからだといいます。

いじめられて傷ついた上に、それを糧として乗り越えることを

強いられるのは、とても困難なことだからです。

 

そんな中で、いじめをしたことも、されたことも、

矮小化や美化もしていない貴重な作品だと思います。

 

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