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日本の人口問題は「やってるふり」の典型か【パンデミック以後】

0.はじめに

エマニュエル・トッドさんは、フランスの文化人類学者で、

これまでにも、ソビエト連邦の崩壊、

イギリスがEUから離脱した「ブレグジット」などを予測し、

世界的知性との評価も高い人物です。

特徴的なのは、人口統計や家族のあり方などから独自の分析を行う

「人口学者」として著名な方でもあります。

 

日本では、人口問題は30年以上前から問題とされていましたが、

具体的な対策は打たれないまま、年々深刻化するばかりで、

有効な解決策が示されないことは、

若い世代にとっては、未来に対する不安感から絶望感に変わりつつあります。

 

今回紹介させていただくのは、人口問題に詳しい

エマニュエル・トッドさんが、日本の人口問題に対して論じている部分が

掲載されている書籍です。

長年問題視されながらも、有効な対策が論じられることのない

人口問題に対する、専門家の見解が参考になります。

 

日本の人口問題に関する部分以外にもとても興味深く語られているので、

世界の流れを読み解くにあたって、とても参考になる一冊です。

 

今回の目次です。

 

1.紹介する本

パンデミック以後 米中激突と日本の最終選択」(朝日新書

著者:エマニュエル・トッドさん

 

2.内容まとめ

2018年から2021年までのインタビュー集になります。

時期的に色々な話題に絡んで、コロナ禍に関する内容が多く含まれています。

主に語らられる内容は、

・トランプ政権とアメリカについて

・コロナ禍での国家と社会

グローバル化とコロナ禍

自由貿易について

・冷戦終結後30年経っての世界

そして、日本の人口問題に関してという話題になっています。

 

フランスの学者の方になるので、欧米の方の世界観と、

人口学者という二つの点から、国内の方とは異なる視点が特徴的です。

日本向けのインタビュー記事なのと、専門の内容であることから、

日本の人口問題では、他のトピックでもふれられます。

 

3.感想とまとめ

アマゾンの感想コメントでは、

パンデミック以後」というタイトルは適切ではなかった、

というコメントが複数見られますが、間違ってはいない指摘だとは感じます。

 

今、話題になっている経済安全保障、食料安全保障につながる観点なども

ふれられて、未来予測的なヒントも読み取ることはできますが、

今までも、様々な世界の変化を予想してきた実績から、

識者がコロナ後の世界を予想する、みたいなニュアンスではなく、

ズバリの当たりはずれを期待していた人には、

ちょっとアテが外れた形なのかもしれません。

 

専門のジャンルである、日本の人口問題と家族制については、

賞賛と皮肉が入り混じる評価をしています。

1990年代はじめに初めて訪日した時には驚きました。

人々がすでに人口動態の問題について盛んに語っていたからです。

すごい。

日本人は同じ問題を抱えている欧州の国々の人たちより意識が高い、

と思っていました。

日本とまったく同じ問題を抱えている欧州の国は多いけれど、

そのことについてあまり考えをめぐらせていませんでした。

(中略)

で、人々はあいかわらず人口動態について話は続けている。

それを見ていて、私はこう考えるにいたりました。

日本では人口動態の問題は議論のテーマであって、行動のテーマではない。

 

また、他のパートでも、人口動態の問題に動き出さない日本人に対して、

これは恐るべきことです。

人口が減り、そしてその人口も老いている。

だとすれば、それはもう同じ社会ではあり続けられません。

(中略)

そうなると、選択肢は、今のままでいるか、変わるかではない。

悪い方に変わるか、良い方に変わるか、でしかありません。

 

まず専門家の見地として、日本の取り組むべきは、

出生率の増加にあると述べられています。

移民政策に取り組むとしても、直系家族制を継続するにしても、

まずは、第一に出生率の増加なしには解決できないというのは、

理にかなっている意見だと感じます。

 

産めよ増やせよ」が国家全体主義的なニュアンスで忌避されること、

もちろん女性にとって、婚姻も、出産も自由であるべきことも

出産しないことを負担に感じることがない社会であるべきことも、

当然に踏まえた上で、できれば産みたい方々を妨げている要因は何で、

どう解決する必要があるのかは、優先度合いの高い問題であると

強く感じさせます。

 

インタビュー形式な分、ことばが平易でとても読みやすい本なので、

是非一読をおすすめできる本だと思います。

 

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