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昔は本当に良くて、今は劣化ばかりなのか?【「昔はよかった」病】

0.はじめに

テレビのワイドショー、ネットで良く出てくる、

「日本はだんだん悪くなっている」「昔は良かった」の話ですが、

もともとは、ご年配の方が、

自分の若く元気でハツラツとしていた時代を思い返して

回顧するコメントなのだと私は思っていました。

 

しかし、近年は若い人、中年の人たちも

日本の経済成長が他国に比べて進んでいない事などに組み合わせて、

「良かった昔を成長、維持できなかった責任」という論理で、

形を変えた「昔はよかった論」が展開されています。

 

教育制度の改革から生まれた「ゆとり世代」を揶揄したのは、

主には、年配の方ではなく、

その世代の少し上の世代が多かったとも言われます。

昔はよかった、の争いは、年配の方対若い方の二元論だけでもありません。

様々の変化の節目前後に「ビフォー世代」「アフター世代」

が生まれるので、これに関してはビフォー世代だけど、

あれに関してはアフター世代、みたいな形が生まれます。

 

今回は、そこまで複雑な話にはなりませんが、

「昔はよかった」という考えに、楽しく一石を投じる書籍を

紹介させていただきます。

気楽に読んでいただける、面白い書籍ですが、

本当な、色々な「以前は良かった」を見直すきっかけに

なるかもしれません。

 

今回の目次です。

 

1.紹介する本

「「昔はよかった」病」(新潮新書

著者:パオロ・マッツァリーノ さん

著者のパオロさんは、

イタリア生まれの日本文化史研究家、と著書内で紹介されていますが、

一説によると、社会心理学者の内藤朝雄さんとも言われています。

(もし内藤さんなら、「いじめの構造」という書籍紹介で、

 別記事で紹介させていただいています)

他にも、挑戦的な視点で書かれている話題の書籍があります。

 

2.内容まとめ

昔はよくて、現代は本当によくないのか、

について、様々なトピックに関して

数字や出来事、当時の報道などを挙げて、検証を重ねていく

エッセイ集になります。

 

話題になりやすいところでは、

・昔は治安がよく、凶悪犯罪はなかったのか

・外見差別の問題

・いまの子どもは身体が弱いのか

・昔は人情が深かったのか

・昔の商店街は良かったのか

など、全13章の構成で、

昔はよかったと言われがちなトピックを

軽妙な語り口でぶった斬っていく、という印象のとても読みやすい書籍です。

 

3.感想とまとめ

著者は、昔の人を持ち上げて、今の人に劣等感を植え付けても、

今が生きづらくなるだけだ、と説いています。

むかしの人も、いまの人もなんら変わりないんだよ、

いつの時代も人間は、ダメな生き物なんだよ、と真実を教えた方が、

どんなに気楽に生きられるか。

と冒頭でのべられていますが、とてもこの書籍を通して、

著者の思いが伝わる部分だと思います。

次々に「昔はよかった」を論破していきますが、

今に悲観することなく、元気が出るように、という意図がうかがえて、

読み終わりも軽い気持ちになれるのは、

この思いが著書を通して感じられるからではないかと思います。

 

逆に、ネットでの「昔はよかった」には

結構容赦ない記述もあります。

いまの日本人はむかしよりダメになったと主張するかたがたは、

「自分以外の日本人が劣化した」と考えているのですから。

いまの日本人は劣化した。

→むかしの日本人はまともだった

→むかしの日本人にシンパシーを感じる私は、まともで劣化していない

なんの根拠もないエセ三段論法で自分をできるのでとても便利です。

正常性バイアスという、自分に都合の悪い情報は

見過ごしてしまう、という心理作用からだと思われますが、

なぜか自分だけは例外と思い込み、

一種の勝手な価値転換を引き起こしていることを断じています。

 

といっても、全体を通して、強い風刺感はなく、

世間話のネタになるような、重たくない話題が選ばれていると思います。

著者のように、ユーモアとウィットで、

ネットコメントをさらっといなすことができたら素敵だな、と感じさせます。

 

著者は著書ごとに肩書きが色々出てくる

かなりいわくつきの方ですが、

落語から、昭和のアイドルまで通じている、

もしイタリア人なら、かなり日本通の方です。

(イタリア語は聞こえないふりをする、と公式ブログで紹介されています)

 

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