一方的な批判・非難ばかりのSNS、いじめについて考える読書ブログ

少しでも心のモヤモヤが晴れて、心が優しく、強く感じられるように。

いじめは仕組を知らないと解決につながらない【いじめの構造】

0.はじめに

いじめを本当になくしたい、と思った時、

被害者の保護と、加害者の非難を中心にしてしまっている、

現在のいじめの報道などに疑問を持っている、という話は、

以前の記事で書かせていただきました。

 

確かに一番は、今、つらい人を何とかするのが、

最優先するのは大事なことだと思います。

 

ただ、加害者を非難して、マスコミやネットが成敗しても、

いじめはなくならないと考えています。

実際に、いじめ問題をワイドショーで、ニュースで、特集番組で報道しても、

いじめのニュースは後を絶ちません。抑止になっていないのです。

むしろ、大人側の隠ぺいの体質だけが強くなっているとすら感じます。

 

ただ、いじめの解決に取り組む人たちの中では、

加害者が発生する仕組みを誰もが理解することで、

加害者発生を抑止する、という考え方は、

一つの案としては、色々な提唱がされてきていますが、

まだ流れにはなっていない印象です。

 

加害者心理の解明は、被害者に非が無い事件の解決には

最も重要な要素となります。

京都アニメーションの事件は、とても悲惨な事件で記憶に新しいですが、

重体だった加害者を先端医療を駆使して治療を続けたのは、

加害者の心理の解明が、事件の解明と再発防止には欠かせないからです。

 

今回紹介するのは、いじめの構造や発生・エスカレートの仕組について、

考えている書籍になります。

主に学校体制などにも触れているので、

学校でのいじめについての書籍ではありますが、

会社内など、ある程度閉鎖的な人間関係の空間なら、

同じことが生じてしまうと実感できます。

 

よく、大人向け、子ども向けでいじめの問題は分けられがちで、

確かに学校は独自の体制があるのかもしれませんが、

いじめは社会でどうしても起きてしまう問題と考えているので、

このブログでは、どちらも共通の事として、紹介したいと考えています。

 

今回の目次です。

 

1.紹介する本

「いじめの構造-なぜ人が怪物になるのか」(講談社現代新書

著者:内藤 朝雄さん

著者の内藤さんは、社会学者の方で、社会心理学の専門とされていますが、

いじめ関係の書籍も多く出版されています。

他の図書で、子どもが読むことを対象にした、いじめ関連の書籍では、

いじめっ子との距離の置き方や、いじめのタイプ分けと対処法、

いじめられている子が自己否定に走らない様に、権利の問題などにも

触れられているものもあり、

上から目線だけではない、今の対処も、将来的な撲滅にも

取り組まれていると感じています。

 

2.内容まとめ

学校は、「クラスのみんな仲良し」を前提としてしまっているので、

人数が多くなると、必然的に、相性が悪かったり、

気に食わない相手ができてしまい、

その対象を排除したり、思い通りにしたい衝動が起こってしまう。

 

また、その「みんな仲良くしよう」が、いじめに加担させる要因にもなり、

人数が多くなることでエスカレートを招いてしまう、

という仕組みを詳しく解説されています。

学校の環境に対する問題、既存の制度が活用されていないこと、

このいじめの仕組みに対して、どう臨むべきか、などにも触れています。

 

クラスや会社の部署などの単位がいじめの基本になってしまうことは、

大いに考えやすく、仲良しや協力が、ゆがんだ形として、

いじめのエスカレートを招いてしまう観点は、

フリーライダーを許さない、などの

個人の頭の中で生じる、いじめに対する仕組みとは違うものになりますので、

合わせて、大変参考になると思います。

 

3.感想とまとめ

子どもの性格や、相性を考慮しないまま、管理上の都合で決めた集団の中で、

集団で仲良くしないといけない、という無理強いが、

いじめの発生の原因となってしまうことは、

言い方はキツイですが、子ども側からではなく、

大人の都合から作られた仕組なので、理解の及ぶところだと思います。

もちろん、最初は合わないと思っていた人とも、

クラス分けや部署が一緒になったことをきっかけに仲良くなったり、

なども多いので、一長一短なことも理解の上です。

 

実際、クラス分けの制度がなくならない場合は、

「協力」と、「仲良く」は別に両立しなくてもいい、という認識も、

いじめを発生させない為の一つになると考えられます。

学校が社会勉強の一環というなら、

簡単ではないこともわかった上ですが、

仲良くなくても、うまく時に応じて協力できる関係づくり、

の育成の方が現実的だと思います。

いじめの構造上、前提条件となってしまっている、

・同じクラスだから、全員仲良くしないといけない

という条件を外せば、

一つストレスの要因が減るので、いじめの発生プロセスが一つ

減らせたことになります。

仕組から考えれば、可能になってくることもあると考えます。

 

同じクラスだから、仲良くしなくてはいけないけど、

自分とは合わない、違和感を感じる相手だから、なんかムカつく、

というストレスは、学生の頃を考えても、

起きておかしくない感情だろうな、と思われます。

 

同時に、日本人が苦手だと言われている、

多様性を認める認識が深まっていくことにつながる可能性にもつながり、

よりいじめの減少・撲滅には、近づいていくと思われます。

 

著書内の提言が、現実的ではない、という書評も見られますが、

海外では対応できていることなので、特別、日本だと不可能にも思えず、

いつまでも、「頑張って」「みんなで仲良くして」いじめをなくそう、では

いじめが増えて、エスカレートの一方になってる現実が残るだけだと考えます。

 

いじめが、集団でのちょっとした遊び感覚で、

エスカレートしていく様子は、別記事、

「いじめをきちんと両面から考える」で紹介している

DVD内の付録画像のワークショップで映画に出演している、

子どもたちが実際に体験している様子が観ることができて、

大変興味深く、こわい内容です。

 

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