一方的な批判・非難ばかりのSNS、いじめについて考える読書ブログ

少しでも心のモヤモヤが晴れて、心が優しく、強く感じられるように。

仲良くなくても、協力はできる【わかりあえないことから】

0.はじめに

今の生きづらい社会の原因の一つに、

コミュニケーションの不足を理由に挙げる人は少なくないと思います。

コロナ禍でも、コミュニケーション不足は大きな問題とされ、

いじめ問題の解決にも、コミュニケーションは欠かせません。

 

コミュニケーション能力の必要性が社会的に高まっている傾向は、

もう随分長い年月が経ってきたと思います。

企業が社員に求める能力のトップにコミュニケーション能力が挙がって、

もう十年以上が経つそうです。

 

じゃあ、そのコミュニケーション能力ってなんですか?

となると、その解釈は企業だけでなく、日本語としても

あいまいな現状があります。

 

質問を質問で返すと失礼になってしまうかもしれませんが、

もし、面接の時に質問されたら、

「その必要なコミュニケーションってなんですか?」

と聞くと、企業の人は答えられなくなってしまうかもしれません。

教育もコミュニケーション能力育成を重視して、

同じくらい時間が経っていますが、

なかなか成果が上がっているようには見えません。

 

今日はコミュニケーション学の専門家の書籍の紹介から、

その問題を読み解いていきます。

 

今回の目次です。

 

1.紹介する本

「わかりあえないことから」(講談社現代新書

著者:平田オリザさん

平田さんは、劇作家として有名な方だと思いますが、

コミュニケーションの専門家として、大学の教授もされています。

本書では、両方の立場で、コミュケーションについて、

分かりやすく、そして面白く解説されています。

帯の書籍おススメコメントを並べているメンバーも豪華で、

さすがだと、読む前から感じてしまいます。

 

2.内容まとめ

コミュケーションは分かり合う為の手段として、

分かり合うことだけが重視されていますが、

逆説的に、タイトルにある、「わかりあえないこと」を出発点として、

コミュケーションについて考えていく、という主旨で、

書き進められている本になります。

 

コミュケーション能力とは何か、会話と対話の違い、

日本語でのコミュケーション教育からの様々な事例、視点が

解説されています。

終盤には、コミュニケーション・デザインとして、

どうするとコミュニケーションがとりやすくなるのか、

環境や、仕組についても解説されてます。

終盤には、どの様な考え方が、今後のコミュニケーションに必要なのか、

の話に展開していきます。

 

「コミュニケーション」に対するあいまいな感覚を

クリアにしながら、そのあり方が提案されています。

 

3.感想とまとめ

非常に興味深いのは、劇作家としての視点と
コミュニケーション専門家としての両方を併せ持つ
独特の視点です。
他者が書いたことばを話し、必ずしも、心の中では思えていないことでも、
うまく演じること、上手く演じる為には、
その人の魂が乗り移る(俳優さんも少しはいるけども)のではなく、
その役に共感できる部分を拡げて、理解していくことを
プロの俳優さんも行っている事、
必ずわかりあえることを前提としたり、押しつけを行うよりも、
お互いを尊重し合う形をとることへの提案、
意見の調整力にも価値を置く、フィンランド・メソッドの紹介から、
活用の仕方、など興味深い見解がまとめられています。
シンパシーとエンパシーの話などは、別記事で紹介している、
「他者の靴をはく」と共通するところも見られます。
 

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