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相対的剥奪(はくだつ)とは何か【差別はたいてい悪意のない人がする】

0.はじめに

2021年8月に、小田急線の走行中の車内で若い男性が、

「勝ち組の女性を殺したいと思った、相手は誰でもよかった」と

刃物を振り回し、殺人未遂を起こした事件がありました。

原因は、自分の社会的な評価と、自己評価との差から生まれる

ストレスから生じたものだとされています。

 

今回紹介させていただく書籍は、

韓国の女性学者の方が書かれた本になりますが、

韓国の状況もかなり似た状況で、

この事件以前にも韓国で、動機も含めて

同じような事件が起きていることが書かれています。

 

そのことに驚きながら読み始めた本ですが、

非常にわかりやすく差別について、書かれている本だと思います。

難しいテーマなのですが、考えさせられ、課題も感じますが、

提案もあり、読み終わりも良い、絶妙な本だと思います。

 

今回の目次です。

 

1.紹介する本

「差別はたいてい悪意のない人がする」(大月書店)

著者:キム・ジヘ さん

著者は韓国の差別問題の研究や提言を行っている学者の方になります。

日本だと、社会学者になるかな、と勝手に考えています。

この著書が初めての著作との紹介がされています。

 

2.内容まとめ

主に、韓国内での差別問題が書かれていますが、

なぜ翻訳されて、日本で出版されるのかが痛感してしまうほどに、

書かれている内容は、日本で起きている内容に似ています。

 

女性差別、難民問題、外国人、障害者など、

様々な差別問題に対しての問題提起がされています。

この著書での特徴は、

タイトル通り、差別をする原因や、差別をする雰囲気、

差別をする人を、極端なレイシスト(差別主義者)ではなく、

(ある程度)平等な社会に住んでいると思っている人たちにも

ある、と論じているところです。

 

また、どのように向かい合って、変化の先にある平等を

実現していくかを丁寧に解説しています。

ちょっと国内制度の差などがありますが、

差別問題への解消、軽減に向けてのわかりやすいアプローチは、

ちょっと今までにはなかった、貴重な本だと思います。

 

3.感想とまとめ

読んで一番に感じてしまったのは、

いじめ問題にも共通することなのですが、

「一番読んで欲しい人が読まない本」と感じてしまうことです。

 

これは、以前の記事で、紹介させていただいた、

「差別感情の哲学」という書籍でも同じなのですが、

誰もが差別を起こす可能性がある、既に起こしている、

ということを突き付けられる本は、残念ながら、

読みやすく、面白い本ではないからです。

また、差別に目を向けない人に差別を作り出していることには

目を向けないからです。

 

読んで欲しいと感じている対象の人は、

「差別みたいな悪いことは、私はしていない」

「差別は悪い人がすることだ」

「自分は差別の必要がないくらい満たされている」

「差別は、する方だけではなく、される方にも問題がある」

と考えている人で、文字にすると極端に感じてしまうのですが、

「ケースバイケースの時もあるでしょ」と思うだけの方でも、

一読の価値は十分にあります。

 

他に、韓国の、女性の著者と冒頭にあえて書いたのですが、

だから選ばない人もいるかもしれません。

そんな人ほど、手にとってほしいとも感じます。

むしろ、制度によっての取組は、日本より進んでいると思われる面も、

読み取ることができ、何よりも

出身、性別などのバイアスに捉われずに、優れた意見にまず耳を傾けることが、

差別に取り組む第一歩だからです。

 

この本で気になった言葉の一つに、

この記事のタイトルにある、「相対的剥奪」です。

これは、差別をする、個人的な感情で、

相対的剥奪とは、実際に何かを奪われたわけではなくても、

他人と自分を比べた時に、現実の自分と、期待していた自分との差に

不満を感じること、と定義されています。

もう一つは、「トークニズム」です。こちらは、組織的な考え方になり、

見せかけの多様性の為に、少数派の一部をマジョリティに組み込み、

差別を見えない様にする考え方や仕組です。

これは、日本でも、ネット、リアルに関わらず多く見られる現象だと感じます。

 

ジェンダー差別の問題の中で、

別の記事で、ミソジニスト(女性に嫌悪感を抱く人)と

ツイフェミ(ツイッター上で発言を行うフェミニスト

に関する書籍の話を紹介させていただきました。

hanasakutarou.hatenablog.com

ミソジニストの考え方の一つにも、相対的剥奪感は見られます。

ミソジニストの代表的な議論に、

女性専用車両など、もう女性は十分に優遇されて、既得権益を得ている」

という意見が多く見られます。実際には誰もほとんど損をしていない

はずなのに、女性の権利に配慮をすると、

自分の権利を奪われて、損をしている感覚を持ってしまい、

権利を奪ったと勘違いした女性に嫌悪の感情を向けるのが

それにあたると考えられます。

 

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