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生きづらさを減らすために、なぜ宗教が必要なのか【宗教の本性】

0.はじめに

今、特に日本国内で、はっきりと宗教を信じている人は、

どれくらいの割合なのでしょうか。

また、信じている人は何を求めて、信じてない人は、

なぜ宗教を必要としていないのでしょうか。

そもそも、宗教にはどんな意味があるのでしょうか。

 

どうしても、万能の神仏が世界の全てを作ったという

宗教の様々なはじまりの定義は、確かに信じがたくなりました。

「科学的に証明できないこと」「非科学的」

ということが、国内では信じられない理由ではないでしょうか。

それでも、海外では教会に通う人、礼拝を行う人など、

宗教を持つ人の方が多数だと感じます。

 

今回紹介させていただくのは、

そのような中での宗教の意味を考える書籍です。

仏教を専門とする宗教学者が、現代において、

宗教とはなんなのか、宗教の意味と目的はなんなのか、

一種の再定義を行ってみた書籍になります。

 

個人的には、とても興味深い書籍でした。

もちろんですが、特定の宗教への勧誘を行うものでは、

この記事も、書籍もありませんので、ご安心いただいて、読み進めて下さい。

 

今回の目次です。

 

1.紹介する本

「宗教の本性 誰が「私」を救うのか」(NHK出版新書)

著者:佐々木 閑さん

著者の佐々木さんは、仏教を専門とする宗教学者です。

NHKの名著を紹介する番組などに出演されていて、

ご存じの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 

2.内容まとめ

書籍冒頭で、日本国内での近現代における宗教の変遷、

信仰心の変化、宗教教育について、問題提起を行います。

 

日本では、明治から、国家神道として天皇が神として崇められ、

戦後は禁止されます。その後は、日本では宗教は危険なものをみなされ、

宗教を「教えず、学ばず」の姿勢が取られ、

国家神道も深く根付いたものではなかったため、

現在は、日本人の多くは、無宗教でこの先も宗教は必要ないと

考える人が多い現状が述べられます。

 

宗教の概念もよく教育されていないので、理解が進まず、

宗教に逆にがんじがらめにされながら、無宗教だという人も多く見られます。

また、世の中の不安、生きづらさを感じる人が多い中で、

改めて宗教の意味を正しく理解する目的に進んでいきます。

 

書籍の中で、「客観的」「主観的」の両面から、

宗教を分析して、学校では教えてもらえなかった、

宗教の本質を解説する、この本の目的が語られます。

 

前半は、主に客観的な面から宗教の理解が進められます。

序盤では、ホモサピエンスという種と宗教の関係、

宗教の様々な変遷が解説されます。

中盤は、イデオロギーと宗教の意味合いの関係、

現代の科学と宗教の関係に入ります。

 

後半は、主観的な面からの宗教の捉え方の理解が進みます。

心の中での宗教の意味、自死の宗教の捉え方の違い、

また宗教が生きること、死ぬことに何をもたらすのか

宗教全般のスタンスを、専門の仏教学の解釈をまじえながら解説しています。

 

終盤には、現代の宗教のあり方に話は進みます。

よい宗教、悪い宗教はどこが違うのかの違い、

宗教教育の必要性と、悪い宗教の見分け方、今後私たちが、

何らかの宗教と関わって生きるための著者の提言が述べられます。

 

全般を通して、宗教の勧誘感はもちろんありませんし、

人間にとっての広い意味での「宗教」とは何なのかを

考えるきっかけをもらえる、とてもいい書籍です。

 

3.感想とまとめ

私たちが生きる上で、「宗教とは何か」の理解が進む、

貴重な一冊だと感じました。

日本人のそれなりの多くの割合が無宗教と考えているのではないでしょうか。

初詣、お盆、クリスマス、除夜の鐘など、

日本では、宗教はイベントの材料ぐらいにしか捉えてなくて、

お葬式、お墓の話になって初めて自分の家の宗教を思い出したり、

初めて知るようなことも多いと思われます。

そんな多くの人が、読むと効果がある本だと感じます。

 

日本人の多くは、では何を信じるのですか、と問われると、

「科学的な事実を信じる」という人は多いはずです。

実際、あらゆる現象には科学的な因果関係が存在し、

今も新しい科学的な法則の解明は続いています。

宇宙の始まりのビックバンも、科学的な理論で説明される時代で、

およそ、特に自然科学的な事象は、ほとんど科学で説明がつきます。

 

ただ、その事象を把握しどのように感じ、どのようにあるべきと

考える信条、イデオロギーは、

現世をどのように生きることでより幸福が得られるのか、

その為の一種の考え方の方針に従って生きる、という点において

著者は一種の宗教と同義なものであると解説しています。

 

一番、この本で興味深い点は、

宗教が死の恐怖、不安を取り除く為に必要と説いている点です。

とても、興味深く、理解しやすいことばで

この本のテーマである「宗教の本質」をまとめています。

様々な自由が認められ、医療も発達し長寿化した幸福な現在ですが、

死の不安と恐怖に対しては、一人一人が向かい合う必要がある、

「不幸な幸せ者」である、という主旨が述べられています。

 

死の恐怖に向かい合えないことが、

現世の生きづらさにつながっていることは理解も及びます。

先日の走行中の電車内での無差別刺傷事件でも加害者の動機が、

「自分が社会で生きづらいから死のうと考えたが、

 死にきれず、死刑になることを考えた」という動機が報道で伝えられました。

自分の死に、向かい合うことができずに他の人を無責任に

巻き込んでしまう事件は、無差別刺傷事件の動機で語られますが、

自己中心的であることだけが、その原因だけではないのかもしれません。

 

一般的な宗教に感じるデメリット感が、どこから生まれるものなのか、

なども丁寧に解説されています。

死の不安を軽減することでの、生きづらさの軽減、

その一種の共通ルールとしての宗教のあり方を考えることの有効性を

深く考えさせる一冊です。

 

途中、瞑想などにもふれられているので、関連記事で

坐禅に関する過去の記事も紹介させていただきます。

 

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