取り上げている書籍まとめ5作 いじめ・差別問題編④
0.はじめに
今回は、今まで紹介させていただいた、書籍のうち、
いじめ・差別問題にカテゴリー分けをしている書籍紹介の記事を
まとめさせていただきます。
今回は、主に民族や人種の差別を取り上げている書籍紹介の記事を選びました。
日本では、大きく顕在化しているのは、民族差別になり、
在日コリアンの方が差別の対象となっていることが多く見られます。
海外では、特定の民族差別というよりは、
移民系の人たちに対する全般的な差別となるようで、
今回紹介させていただく書籍には、日本人が海外で実際に遭遇する、
実体験的な差別の実情が書かれているものもあります。
ただ、いずれの書籍も、単に差別の紹介にとどまらず、
その解消に向けての考え方・行動にもつながる書籍を取り上げています。
今回の目次です。
- 0.はじめに
- 1.ネットと愛国(講談社+α文庫)
- 2.「在特会とは「在日特権を許さない市民の会」の略称です」(青林堂)
- 3.「他者の靴を履く アナーキック・エンパシーのすすめ」
- 4.「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」 (新潮文庫)
- 5.ヘイトスピーチと対抗報道(集英社新書)
- まとめ
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1.ネットと愛国(講談社+α文庫)
著者:安田 浩一さん
2.「在特会とは「在日特権を許さない市民の会」の略称です」(青林堂)
著者:桜井誠さん
「在特会(在日特権を許さない市民の会)」についての書籍になります。
1.の書籍は、在特会の起源から、活動内容と活動する人物に対して、
取材を重ねたノンフィクションルポになります。
代表の人物像をはじめ、地方支部で活動を行う人、
また活動を共に行ってきた人たちからのインタビューなども書かれています。
また、在特会の主張する「在日特権」とは何で、現状はどうなのか、
という検証も重点的におこなわれています。
2.の書籍は、在特会側が発行している書籍になります。
東京都知事選にも出馬している代表が、どのような主張で、
在特会を発足、運営しているのかが書かれています。
3.「他者の靴を履く アナーキック・エンパシーのすすめ」
著者:ブレイディみかこ さん
「他者の靴を履く」とは、イギリスでの「共感(エンパシー)」を
の意味をあらわすときの定型句だそうです。
差別問題の解決には、多様性の理解がカギだと言われていますが、
イギリス在住の著者は、その経験から、差別の解消につなげる為には、
「同感(シンパシー)」から「共感(エンパシー)」に
変化することが必要と解説されています。
日本よりもより人種差別が明確な海外での事例の紹介と、
その解決に向けての先進事例を受けて著者が感じられることにういて、
論じられている書籍になります。
4.「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」 (新潮文庫)
著書:ブレイディみかこ さん
3.の「他者の靴を履く」と同じ著者が、
海外での子育ての実経験に基づいた書籍になります。
著者の中学生の息子の学校での経験、その周囲の大人の対応などが、
テンポよく、描かれています。
形式が気になる方は、実体験に基づく小説、と解釈されると読みやすいかと思います。
生徒会長の経験もある、真面目な優等生である、著者の息子さんが、
進学先として、中産階級の学校を選択し、進学したところから
話ははじまり、そこで様々に体験する格差と人種差別、
それらを多感な思春期の感性で真面目に捉えた感想を
「アナーキーでパンクな母ちゃん」である著者と共有し、考察を重ねていく
ストーリーになっています。
息子さんの感性がとても素敵で、シビアにならずに読み進めて
いけるベストセラー作品で、続編も出版されています。
5.ヘイトスピーチと対抗報道(集英社新書)
著者:角南 圭祐さん
韓国と日本、両国での取材経験が長いジャーナリストの著者が、
ヘイトスピーチの紹介、解説とそれに関わる人たちの取材から得られた知見、
そして、ヘイトスピーチについての検証を解説しています。
国内でのヘイトスピーチの規制に関する法律なども解説されています。
集団になることで、過激になる様子が描かれ、
個人の差別感情を論じた書籍とは一線を画します。
「ヘイトスピーチの入門書」と著者は位置づけている書籍で、
その歴史、事件の理解がしやすい書籍になっています。
まとめ
差別感情をヘイトスピーチで発信することへの対応の一つは、
ネットの炎上の対策と同様で、その発言内容が正しいのかどうか、
検証を行うことは、効果的な対策だと感じられます。
また、ブレイディみかこさんの書籍で論じられる、
「共感(エンパシー)」については、
他記事で紹介している書籍でも、自己の内面を振り返ることで、
ジェンダー問題を考察するアプローチを行っているものも見られ、
差別が生じる全般に対して、有効な方法なのだと感じられます。